2022.06.16 麻酔科抄読会

担当:西村先生(指導医 河野先生)
Humeidan L, et al. Effect of Cognitive Prehabilitation on the Incidence of Postoperative Delirium Among Older Adults Undergoing Major Noncardiac Surgery: The Neurobics Randomized Clinical Trial. JAMA Surg. 2021 Feb 1;156(2):148-156.

背景:
術後せん妄(POD)とは術後の高齢者によく見られ、短期的・長期的予後を悪化させる。年齢とともに発症率は増加し、高齢者の3分の1に認める。術後の機能回復を遅らせ、入院期間増加とコスト増大にもつながる。POD予防のための認知運動プログラムを含む術前リハビリテーションが有効な戦略になりうるが、未だ明確な結論は出ていない。

目的:
術前の認知運動プログラム(Lumosity:米国で開発されたアプリケーションゲーム)が 術後せん妄発症に与える影響を調査する。

方法:
P:全身麻酔を実施する、72時間以上入院予定の 60歳以上の患者
I:術前に認知運動プログラム(Lumisity)を実施
C:術前に認知運動プログラム(Lumisity)を実施しない
O:手術から術後7日目、または退院までのせん妄発症率(MDAS, CAM-ICUで評価) 術前の認知機能障害や活動性うつ病、心臓外科手術・脳外科手術、術直後に抜管不能であった症例は除外した。

結果:
無作為化を受けた患者268名のうち、それぞれ134名ずつ介入群、対照群に割付さ れ最終的に介入群125名、対照群126名が解析され、せん妄発症率は対照群で 23.0%(29/126)、14.4%(18/125)(P=0.08)、介入群のうち実施時間0時間のもの2名を除く と、介入群13.2%(16/121)(P=0.04)であった。Baseline characteristics において2群で差のあった「整形外科手術割合」「歩行制限」を調整した多変量回帰解析では、介入群でせん妄発症 RR 0.58(P=0.047)であった。

今回の論文から読み取れる事実が何も調整を加えないPrimary outcomeの結果のみであること、術後せん妄の機序として考えられている神経膠細胞の炎症を今回の介入で防げるのか考察する必要がある、など聴衆からは沢山の意見や質問が多く上がり、批判的吟味と活発な議論が行われました。
西村先生、河野先生どうも有難うございました。

亀田総合病院 後期研修医 藤井

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療