2022.06.30 麻酔科抄読会

担当:山本 蓮先生/柘植 雅嗣先生
タイトル:小児におけるLMA®マスク抜去後の呼吸器有害事象:プロポフォールとセボフルランを比較した無作為化試験
K Cynthia. et al; Anesth Analg; 2022 Feb 25. doi: 10.1213/ANE.0000000000005945

背景
小児におけるラリンジアルマスクエアウェイ(LMA®)の抜去は、呼吸器有害事象と関連する可能性がある。これらの有害事象の発生率は、麻酔の種類によって影響を受ける可能性がある。プロポフォールを用いた静脈内麻酔(TIVA)とセボフルランとの比較研究は限られており、セボフルランによる導入・維持と比較して、プロポフォールの使用がLMA抜去時の呼吸器有害事象の発生率が低いかどうかは相反するデータが存在する。著者らは、プロポフォールを用いたTIVAがセボフルランより呼吸器有害事象が少ないことを仮定している。

方法
この前向き無作為二重盲検臨床試験では、生後6か月から7歳の小児をTIVA群とセボフルラン群の2群に割り振った。患者は機械的人工呼吸を受け、手術終了後に患者が生理学的・神経学的に回復し、安全で自然な気道を確保できる程度になった時点でLMAを抜去した。本研究の主要評価項目は、1件以上の呼吸器有害事象の発生率、個々の呼吸器系有害事象の発生率、および麻酔覚醒後の気道過敏性スコアであった。副次的評価項目として、LMA挿入の容易さ、維持期の麻酔の質、血行動態の安定性、LMA抜去までの時間、覚醒時不穏の発生率などを検討した。

結果
プロポフォールを用いたTIVAを受けた小児は、セボフルランを用いた吸入麻酔を受けた小児と比較して、呼吸器有害事象の発生率が有意に低く(10.8.% vs 36.2%、相対リスク、0.29、95%CI[0.14-0.64] 、P=.001)、重症度も低値であった(P=.01)。2群間の副次的評価項目には、セボフルランを投与された患者でより頻繁に発生した覚醒時不穏を除いて、統計的に有意な差は認められなかった(P<0.001)。

検討
当試験ではいくつか問題点を抱えている: 主要評価項目には3つの項目が含まれており、RCTとしての統計が正しく処理されていなかった。 また、複合項目である呼吸器有害事象に咳嗽が入っており、ほとんどの有害事象が咳嗽であった。
さらに、セボフルラン群での覚醒時不穏の発生率が6割ほどと通常の臨床より遥かに高く、 深い麻酔の中での抜管の可能性が高い。
数少ない小児におけるRCTという点は評価できる。

亀田総合病院 麻酔科 後期研修医 金

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療