2021.06.15 抄読会

担当:後期研修医2年目 荻野 仁史先生/指導医 吉沼 裕美先生
論文:Pain Response to Open Label Placebo in Induced Acute Pain in Healthy Adult Males :
Tobias Schneider, M.D. et al. Anesthesiology. 2020; 132:571-80

[背景]
オープンラベルのプラセボは慢性疼痛の軽減に有効である。近年、プラセボの疼痛への効果に関する研究が行われており、この分野への関心が高まっている。しかし、急性疼痛に対するプラセボの効果に関するデータは乏しく、痛覚過敏やアロディニアに関するデータもない。本研究では、健康な成人男性を対象に、オープンラベルのプラセボの急性疼痛に対する効果と、プラセボ教育の影響を評価した。

[方法]
健康な男性32名を対象に、単一施設で、前向き、ランダム化、評価者盲検のクロスオーバーの研究を行った。本研究では、皮内電気刺激を用いた疼痛モデルにおいて、痛みの強さ(NRS)、痛覚過敏の領域(von Freyテスト)、アロディニア(乾いた綿棒)を評価した。また、プラセボを静脈内投与した場合の痛みに対する効果を、無治療と比較して検討した。さらに、痛覚過敏とアロディニアに対するプラセボの効果と、プラセボ投与前の教育(短時間と長時間)の影響を検討した。唾液中のコルチゾール濃度も測定された。

[結果]
痛みの評価(中央値、第1/第3四分位点)は、プラセボ投与群が無治療群に比べて21%低く、それぞれ4.0(3.2/4.9)対5.1(4.7/5.4)であった(P = 0.001)。痛覚過敏およびアロディニアの面積は、プラセボ投与群が無投与群よりも低かった(痛覚過敏:30cm2[17 /47]対55cm2[42/68]、P=0.003、アロディニア:24cm2[11/39]対45cm2[31/62]、P=0.007)。これは47%の減少に相当する。プラセボ教育の程度は痛みに影響しなかった。唾液中のコルチゾールは時間の経過とともに有意に減少した。唾液中のコルチゾールの濃度は、プラセボ効果や疼痛評価のために与えられる電流の強さとは関連しなかった。

[結論]
オープンラベルのプラセボは、multimodal analgesiaの一端を担うかもしれない。

[議論]
本研究の研究デザインや確立された疼痛モデルが実施されたことは評価すべき点であるが、臨床効果を評価するための時間が不十分であること、研究対象を女性、高齢者やハイリスク患者にまで広げる必要があることは課題として挙げられる。

侵害刺激が末梢神経から脊髄後角に伝達される仕組みを、図説を用いて分かりやすく解説していただき基礎知識の理解も深まりました。
荻野先生、吉沼先生ありがとうございました。

亀田総合病院 後期研修医 柳 俊文

このサイトの監修者

亀田総合病院
麻酔科主任部長 小林 収

【専門分野】
麻酔、集中治療