注目論文:60歳以上の成人におけるRSVワクチン入院予防効果:2シーズンにわたる評価

呼吸器内科
2023年に導入された60歳以上向けRSVワクチンの2シーズンにわたる有効性(VE)を評価した、米国のIVYネットワークによる重要なtest-negativeデザイン研究です。全体の入院予防効果は58%と示されましたが、接種当シーズンは69%に対し、前シーズン接種では48%と低下傾向(p=0.06)が見られました。臨床で特に注意すべきは、免疫不全患者(VE 30%)や心血管疾患患者(VE 56%)において、健常者(67%)より有効性が有意に低かった点です。効果の減衰が示唆され、特にこれらのハイリスク群では再接種が必要となる可能性も考えられます。最適な接種間隔の決定に向けた継続監視が不可欠です。
RSV Vaccine Effectiveness Against Hospitalization Among US Adults Aged 60 Years or Older During 2 Seasons
60歳以上の米国成人におけるRSV関連入院に対するRSVワクチン有効性の2シーズンにわたる評価
Surie D, Self WH, Yuengling KA, et al (for the Investigating Respiratory Viruses in the Acutely Ill (IVY) Network).
JAMA. 2025 Aug 30:e2515896.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40884491/
背景:
60歳以上の成人を対象としたRSV(呼吸器合胞体ウイルス)ワクチンは2023年に利用可能となった。75歳以上の全成人と、重症RSVのリスクが高い60~74歳の成人に1回の接種が推奨されているが、予防効果の持続期間は不明である。

研究デザイン:
本研究は、2023年10月1日から2024年3月31日、または2024年10月1日から2025年4月30日のRSVシーズン中に、米国20州の26病院に急性呼吸器疾患で入院し、発症から10日以内に呼吸器ウイルス検査を受けた60歳以上の成人6958名を対象とした、test-negative症例対照研究である。症例患者はRSVのみ陽性、対照患者はRSV、SARS-CoV-2、インフルエンザのいずれも陰性とした。人口統計学的および臨床データは、患者面接と電子カルテから取得した。

暴露:
発症の14日以上前にRSVワクチンを1回接種したこと。
主要評価項目と測定:
多変量ロジスティック回帰を用いて、入院した症例群と対照群におけるRSVワクチン接種のオッズを比較した。モデルは年齢、性別、人種・民族、地理的地域、暦月、年で調整した。ワクチン有効性(VE)は (1 - 調整オッズ比) × 100% として推定した。解析は、発症に対するRSVワクチン接種のタイミング(同シーズン vs 前シーズン)によって層別化した。

結果:
60歳以上の成人6958名のうち、821名(11.8%)がRSV症例、6137名(88.2%)が対照であった。全患者のうち1438名(20.1%)が黒人、4314名(62.0%)が白人であり、3534名(50.8%)が女性であった。年齢中央値は72歳(IQR, 66-80歳)で、1829名(26.3%)が免疫不全状態であった。症例の63名(7.7%)および対照の966名(15.7%)がワクチンを接種していた。2シーズンを通じたRSV関連入院に対する推定VEは58%(95% CI, 45%-68%)であった。同シーズン接種のVEは69%(95% CI, 52%-81%)であったのに対し、前シーズン接種のVEは48%(95% CI, 27%-63%; P = .06)であった。2シーズンを通じた推定VEは、免疫不全のない成人(67%; 95% CI, 53%-77%)と比較して、免疫不全の成人(30%; 95% CI, -9%-55%)で有意に低く(P = .02)、また心血管疾患のない患者(80%; 95% CI, 62%-90%)と比較して、心血管疾患を有する患者(56%; 95% CI, 32%-72%)でも有意に低かった(P = .03)。

結論:
RSVワクチンは2シーズンにわたりRSV関連入院を予防したが、その有効性は免疫不全患者および心血管疾患患者において、これらの状態がない患者よりも低かった。最適なRSV再接種間隔を決定するために、継続的な監視が必要である。