注目論文:COVID-19 JN.1対応ワクチンの入院・死亡予防効果:デンマーク全国コホート研究

呼吸器内科
最新のJN.1対応mRNAワクチンについて、その臨床的有効性を示す待望の大規模疫学データがデンマークから報告されました。この全国レジスターベースのコホート研究は、65歳以上かつXBBワクチン接種歴のある集団を対象としています。結果は非常に明瞭で、BNT162b2(ファイザー)のJN.1対応ワクチンは入院に対し70.2%、死亡に対し76.2%の高い予防効果を示しました。mRNA-1273(モデルナ)はさらに高い有効性(入院84.9%、死亡95.8%)でしたが、接種者背景がより若く健康であった点に留意が必要です。重要なのは、この効果が接種後4ヶ月間持続し、KP.3.1.1やXECなどの新たな流行変異株に対しても有効性が維持されていた点です。高齢者への定期的なアップデートワクチン接種戦略が重症化予防に極めて有効であることを強く支持するエビデンスです。
Effectiveness of the BNT162b2 and mRNA-1273 JN.1-adapted vaccines against COVID-19-associated hospitalisation and death: a Danish, nationwide, register-based, cohort study
COVID-19関連入院および死亡に対するBNT162b2およびmRNA-1273 JN.1対応ワクチンの有効性:デンマークの全国レジスターベース・コホート研究
Hansen CH, Lassaunière R, Rasmussen M, Moustsen-Helms IR, Valentiner-Branth P.
Lancet Infect Dis. 2025 Jul 29:S1473-3099(25)00380-9.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40749700/
背景:
JN.1対応mRNAワクチンのCOVID-19による入院および死亡に対する予防効果に関する疫学的エビデンスはほとんど存在しない。本研究では、COVID-19による入院および死亡に対するワクチン有効性(VE)を推定した。

研究デザイン:
この全国的なレジスターベースのコホート研究は、2024年10月1日時点で65歳以上の全デンマーク居住者を対象とした。デンマークの全国COVID-19サーベイランスシステムと、全居住者に割り当てられた固有の市民登録番号を介してリンクされた包括的な人口ベースの登録(毎日更新)を使用した。比較群間のワクチン接種歴の差異を最小限にするため、参加者は2021年に初回ワクチン接種コースを完了し、2023年10月1日から2024年1月15日の間に2023-24年XBB.1.5対応ワクチンを接種していることを要件とした。最近の感染記録がある参加者、または前シーズン以降かつ研究開始前にワクチン接種を受けた参加者は除外した。COVID-19による入院は、ICD-10の主要診断コードB342またはB972(COVID-19が入院の主たる理由であることを示す)に関連し、PCR検査陽性の2日前から14日後までに発生した12時間を超える入院と定義した。死因データが利用できなかったため、COVID-19による死亡は、SARS-CoV-2 PCR検査陽性から30日以内に発生した全原因死亡と定義した。参加者は2024年10月1日の研究開始から2025年1月31日まで、またはそれ以前の死亡日、移住日、追跡期間中の初回SARS-CoV-2 PCR検査陽性日、あるいは追加ワクチン接種日のいずれか早い方まで追跡された。追跡期間中にJN.1ブースター接種を受けた群と受けていない群のイベント発生率を比較するハザード比は、Cox回帰を用いて算出した。VEはワクチンブランド別、ワクチン接種後の経過時間別、および主要流行株であるKP.3.1.1とXEC別に個別に推定した。症例のみの分析(case-only analysis)を用い、2つの変異株間での比較ワクチン有効性を評価した。

結果:
2024年10月1日時点のデンマーク居住者約600万人のうち、1,247,315人が65歳以上であり、894,560人が包含基準を満たして研究に含まれた。年齢中央値は76歳(IQR 70-81歳)、894,560人中484,735人(54.2%)が女性、409,825人(45.8%)が男性であった。JN.1ワクチン未接種群では、2560万人・日の追跡期間中に278件のCOVID-19入院と84件の死亡が観察されたのに対し、BNT162b2 JN.1接種群では6290万人・日で197件の入院と56件の死亡、mRNA-1273 JN.1接種群では920万人・日で10件の入院と1件の死亡が観察された。BNT162b2 JN.1のVEは、入院に対し70.2%(95% CI 62.0-76.6)、死亡に対し76.2%(63.4-84.5)であった。ワクチン接種後4ヶ月時点での有効性の減衰を示すエビデンスはほとんど見られなかった。mRNA-1273 JN.1のVEは、入院に対し84.9%(70.9-92.2%)、死亡に対し95.8%(69.2-99.4%)であったが、mRNA-1273 JN.1接種者はより若く、より健康であった。BNT162b2 JN.1の入院に対するVEは、KP.3.1.1感染後で71.7%(44.4-85.6)、XEC感染後で76.8%(59.0-86.9)であった。これらの変異株による死亡に対するBNT162b2 JN.1のVEは、KP.3.1.1で90.9%(67.4-97.5)、XECで76.3%(24.7-92.6)であった。症例のみの分析では、防御効果に差は認められなかった。

結論:
両方のJN.1対応ワクチンは、入院および死亡に対し、4ヶ月間にわたり高レベルの持続的な予防効果をもたらした。これらの知見は、重篤なCOVID-19アウトカムを減少させる効果的な戦略として、高齢者における定期的に更新される変異株対応mRNAワクチンの継続使用を支持するものである。