注目論文:COPD患者の禁煙治療における地域格差

呼吸器内科
COPD診療において最も重要な介入である禁煙治療が、驚くほど提供されていないという米国からの報告。喫煙を続けるCOPD患者のうち、何らかの禁煙治療を受けたのはわずか36.3%でした。さらに、地方在住者や専門施設へのアクセスに時間がかかる患者ほど、治療の提供率が低いという地域格差も明らかになりました。
Geographic Disparities by Rural-Urban Status and Drive Time to Care in Tobacco Treatment for COPD
COPDに対する禁煙治療における、都市部・地方の状況および医療機関への移動時間による地理的格差
Baldomero AK, Melzer AC, Kunisaki KM, et al.
JAMA Netw Open. 2025 Aug 1;8(8):e2528898.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40857000/
背景:
喫煙を続ける慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者の多くは、重要な介入である禁煙治療(TDT)を受けていません。地方在住であることや医療サービスへの移動時間が、TDTの提供に影響を与える可能性があります。

研究デザイン:
2012年1月から2019年12月の間に米国退役軍人省(VA)で診療を受けた、COPDの診断コードがあり現在喫煙している患者を対象とした後ろ向きコホート研究です。VAの管理データを使用し、地方在住か都市部在住か、また最寄りのVA呼吸器専門施設への移動時間と、TDT(薬物療法および/またはカウンセリング)の処方との関連を多変量ロジスティック回帰モデルを用いて評価しました。

結果:
対象となった喫煙中のCOPD患者238,433人のうち、40.8%が地方在住でした。全体では86,469人(36.3%)にTDTが処方されましたが、薬物療法とカウンセリングの併用は10,302人(4.3%)に過ぎませんでした。TDTの処方率は、専門施設への移動時間が長くなるにつれて減少し、30分以下の患者(38.1%)に対し120分超の患者(32.4%)は低い値でした。多変量調整後、地方在住者は都市部在住者に比べてTDTを受ける確率が有意に低く(34.7% vs 37.0%)、移動時間別に見ても30分以下の37.3%から120分超の32.8%へと移動時間が長くなるにつれて処方率が着実に減少しました。

結論:
喫煙するCOPD患者において、最も重要と言える禁煙治療の全体的な提供率は低かったです。さらに、地方在住であることと専門医療への移動時間が長いことは、TDTを受ける可能性の低下と関連していました。これらの知見は、特に地理的な格差に直面している患者を含め、全てのCOPD患者に対する禁煙治療への取り組みを強化する必要性を浮き彫りにしています。