注目論文:肺炎球菌は検体ソースで耐性パターンが異なる

呼吸器内科
カナダの大規模サーベイランス研究から、肺炎球菌の抗菌薬耐性プロファイルが検体ソースによって異なることが示されました。特に、呼吸器検体から分離された肺炎球菌は、血液培養から分離されたものよりもペニシリンやセフトリアキソンなど複数の抗菌薬に対する感受性が低く、多剤耐性(MDR)率も高いという結果でした。
Comparison of antimicrobial resistance and serotype patterns in Streptococcus pneumoniae from blood cultures and respiratory specimens in Canadian hospitals from the CANWARD study (2007-23)

カナダの病院におけるCANWARD研究(2007-23年)からの血液培養および呼吸器検体由来の肺炎球菌における抗菌薬耐性および血清型パターンの比較
Adam HJ, Golden AR, Martin I, et al.
J Antimicrob Chemother. 2025 Aug 28;80(Supplement_2):ii35-ii44.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40873029/
目的:
2007年から2023年にかけてカナダで血液培養および呼吸器検体から収集された肺炎球菌 (Streptococcus pneumoniae) の抗菌薬耐性および血清型パターンを比較すること。

研究デザイン:
進行中の全国サーベイランス研究であるCANWARDの一環として、カナダの病院から肺炎球菌株が提出された。抗菌薬感受性試験はCLSIの微量液体希釈法により実施した。血清型は全ゲノムシークエンシング(WGS)および/または莢膜膨潤試験(Quellung法)を用いて決定した。

結果:
収集された3111株の肺炎球菌のうち、1103株(35.5%)が血液培養由来、2008株(64.5%)が呼吸器検体由来であった。全体で最も一般的な血清型は3、19A、22F、11Aであった。血清型4、5、7F、8、12F、14、19A、22Fは血液培養由来株でより高頻度に同定され(P ≤ 0.01)、一方、6C、7C、11A、19F、21、23A、23B、23F、31、34、35B、35Fおよび型別不能株は呼吸器由来株でより一般的に認められた(P ≤ 0.03)。ペニシリン、セフトリアキソン、クラリスロマイシン、クリンダマイシン、ドキシサイクリンに対する感受性率は、呼吸器由来株の方が血液培養由来株よりも有意に低かった(P ≤ 0.03)。全体で8.3%の分離株が多剤耐性/超多剤耐性(MDR/XDR)であり、その割合は研究期間中に増加した(P = 0.004)。MDR/XDR率は呼吸器由来株(10.5%)の方が血液培養由来株(5.8%)よりも高かった(P < 0.0001)。MDR/XDR株では血清型19A(40.6%)および15A(27.6%)が優勢であった。

結論:
呼吸器検体由来の肺炎球菌は、血液培養由来株と比較して抗菌薬感受性が低く、MDR率が高いことを示した。血液培養と呼吸器検体から分離される血清型には有意な差が観察された。血液培養由来株の方が、現行の肺炎球菌ワクチンでカバーされる血清型の割合が高かった。