注目論文:Long COVIDの有病率は定義次第:標準化された定義の確立が急務

呼吸器内科
COVID-19後遺症(Long COVID)の診療において、その定義の曖昧さが常に課題となります。本研究は、同じ患者集団に複数の既報の定義を適用すると、有病率が3ヶ月時点で31-42%、6ヶ月時点で14-22%と大きく変動することを明確に示しました。これは、異なる研究の結果を比較することの難しさを浮き彫りにします。さらに、患者自身のLong COVIDの自己申告を基準とした場合、既存の定義は感度が低く(見逃しが多い)、特異度が高い(診断されれば確からしい)という特徴も示されました。信頼性の高い臨床研究や適切な公衆衛生対策のためには、国際的に標準化された、検証済みの定義を確立することが急務であることを示す重要な報告です。
Variability in Long COVID Definitions and Validation of Published Prevalence Rates
Long COVIDの定義のばらつきと既報の有病率の検証
Wisk LE, L'Hommedieu M, Diaz Roldan K, et al.
JAMA Netw Open. 2025 Aug 1;8(8):e2526506.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40794409/
重要性:
Long COVIDの定義は多岐にわたり、その有病率を正確に測定する方法に関するコンセンサスが存在しないため、臨床ケアと研究の両方が複雑化している。

目的:
文献で公表されている様々な定義を用いてLong COVIDの有病率を評価すること。

研究デザイン・場所・参加者:
前向き多施設コホート研究で、縦断的なINSPIREレジストリのデータを使用した。2020年12月11日から2022年8月29日にかけて、米国8施設で初回のSARS-CoV-2検査時にCOVID-19様症状があった18歳以上の参加者を登録し、2023年2月28日まで追跡調査を行った。

曝露:
急性症状があった時点でのSARS-CoV-2検査の陽性または陰性の結果。

主要評価項目:
文献で公表されているLong COVIDの定義に基づき、初回のSARS-CoV-2検査が陽性であった参加者におけるLong COVIDの有病率。副次評価項目は、自己申告によるLong COVIDと比較した際の、公表されている定義の感度と特異度とした。

結果:
合計4575名の参加者が含まれた(平均年齢40.40歳)。参加者の多くは女性(67.7%)で、18〜49歳(73.5%)であった。公表されている5つのLong COVID定義を適用したところ、感染後3ヶ月時点での有病率は30.84% (95% CI, 29.33%-32.40%) から42.01% (95% CI, 40.37%-43.66%) の範囲であり、6ヶ月時点では14.23% (95% CI, 13.01%-15.55%) から21.94% (95% CI, 20.47%-23.47%) の範囲であった。参加者の自己申告によるLong COVIDを基準とした場合、既存の公表定義は感度が低い〜中程度(3ヶ月で最大66.32%、6ヶ月で最大45.53%)、特異度は高い(3ヶ月で最大81.29%、6ヶ月で最大94.26%)であった。

結論と関連性:
本コホート研究において、公表されている定義間でのLong COVID有病率のばらつきは、臨床的認識と研究の比較可能性を向上させるために、標準化され検証された定義の必要性を強調するものであり、最終的にはより正確な診断と治療戦略を導くことにつながる。