注目論文:イタリア主要4学会による呼吸器疾患へのワクチン接種戦略の推奨

呼吸器内科
イタリアの呼吸器・感染症関連の主要4学会が合同で出した、慢性呼吸器疾患患者に対するワクチン接種の推奨をまとめたレビューです。対象は喘息、COPD、気管支拡張症で、RSウイルス、インフルエンザ、SARS-CoV-2、肺炎球菌、帯状疱疹ウイルスという主要な病原体を網羅しています。日常臨床において、これらの患者にいかに増悪させないかは至上命題であり、ワクチンはその最重要戦略の一つです。本邦でも私自身が関わる研究班などでワクチンの有効性評価を進めていますが、このような欧州の包括的な推奨は、我々の診療方針を再確認し、患者さんへ接種を推奨する際の強力な根拠となります。
Vaccination Strategies in Respiratory Diseases: Recommendation from AIPO-ITS/ETS, SIMIT, SIP/IRS, and SItI
呼吸器疾患におけるワクチン接種戦略:AIPO-ITS/ETS, SIMIT, SIP/IRS, SItIからの推奨
Micheletto C, Aliberti S, Andreoni M, Blasi F, Di Marco F, Di Matteo R, Gabutti G, Harari S, Gentile I, Parrella R, Siliquini R, Sticchi L; Associazione Italiana Pneumologi Ospedalieri - Italian Thoracic Society (AIPO-ITS/ETS); Società Italiana di Malattie Infettive e Tropicali (SIMIT); Società Italiana di Pneumologia/Italian Respiratory Society (SIP/IRS); Società Italiana di Igiene; Medicina Preventiva e Sanità Pubblica (SItI).
Respiration. 2025;104(8):556-574.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40058339/
背景:
喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症などの慢性呼吸器疾患は、増悪の再発、入院、死亡率の増加に関連する世界的な健康上の重大な懸念事項です。予防戦略、特にワクチン接種は、感染に関連した増悪を減らし、肺機能を安定させることにより、これらの疾患の管理において極めて重要な役割を果たします。

概要:
本レビューは、イタリアの主要4科学会が提供する、慢性呼吸器疾患を有する個人に深刻なリスクをもたらす主要な呼吸器病原体(RSウイルス、インフルエンザ、SARS-CoV-2、肺炎球菌、水痘帯状疱疹ウイルス)に対するワクチン接種に関する推奨を要約したものです。喘息、COPD、気管支拡張症における増悪を最小限に抑え、患者アウトカムを改善するワクチンの役割を支持するエビデンスが、ワクチン技術の最近の進歩や高リスク集団への推奨とともに強調されています。この専門家主導の学際的アプローチは、合併症を軽減し、医療費を削減し、呼吸器疾患患者の生活の質を向上させるための、的を絞った予防接種戦略の必要性を強調しています。

キーメッセージ:
最新のエビデンスに基づく推奨を収集することにより、本論文は、医療提供者が呼吸器疾患管理において最適なワクチン接種戦略を採用するための指針となり、呼吸器感染症の負担を軽減するためのより広範な公衆衛生上の取り組みに貢献することを目的としています。