注目論文:生物学的製剤は重症喘息患者の経口ステロイド使用を本当に減らすか?

呼吸器内科
重症喘息治療における経口ステロイド(OCS)の減量は、副作用リスクを低減する上で極めて重要な臨床課題です。本研究は、専門医診療(ISAR)とプライマリケア(OPCRD)という異なるセッティングからの大規模なリアルワールドデータを統合し、生物学的製剤の導入がOCS使用量を大幅に減少させることを明確に示しました。特に導入後1年目でOCSを完全に中止できたオッズ比が2.38と高い点は、臨床現場での期待を裏付ける力強いエビデンスです。この結果は、長期的なOCSの副作用を回避するため、適格な患者に生物学的製剤を積極的に考慮する我々の臨床判断を強く後押しするものと言えます。
Impact of Biologics Initiation on Oral Corticosteroid Use in the International Severe Asthma Registry and the Optimum Patient Care Research Database: A Pooled Analysis of Real-World Data
生物学的製剤の開始が国際重症喘息レジストリおよびOptimum Patient Care Research Databaseにおける経口コルチコステロイド使用に与える影響:リアルワールドデータのプール解析
Chen W, Tran TN, Townend J, et al.
J Allergy Clin Immunol Pract. 2025 Aug;13(8):2033-2048.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40294847/
背景:
重症喘息(SA)の管理において、経口コルチコステロイド(OCS)使用の負担を軽減する生物学的製剤の効果に関するリアルワールドエビデンスは限られています。

研究デザイン:
国際重症喘息レジストリ(ISAR、専門医診療)およびOptimum Patient Care Research Database(OPCRD、プライマリケア、英国)から、成人の生物学的製剤開始者を特定し、傾向スコアマッチングを用いて非開始者とマッチングさせました(ISAR 1:1、OPCRD 1:2)。最初の1年間および2年間の追跡期間における1日あたりの総OCS(増悪時のバースト投与を含む)用量に対する生物学的製剤開始の影響を、多変量一般化線形モデルを用いて推定しました。

結果:
5,663名の患者(ISAR 48%、OPCRD 52%)において、生物学的製剤開始者が追跡1年目および2年目に総OCS(TOCS)の中止を達成するオッズ比(OR)は、それぞれ2.38(95%信頼区間[CI], 1.87-3.04)および2.11(95% CI, 1.65-2.70)でした。一方、低用量(0~5mg)のTOCS摂取を達成するORは、それぞれ1.62(95% CI, 1.40-1.86)および1.40(95% CI, 1.21-1.61)でした。非開始者と比較して、生物学的製剤開始者はベースラインから75%以上の減少を達成する可能性が著しく高く(1年目と2年目のOR [95% CI] = それぞれ2.35 [2.06-2.68] および 1.53 [1.35-1.73])、これらの結果は頑健でした。

結論:
SA患者における生物学的製剤の開始は、特に最初の1年間においてTOCS曝露の大幅な減少をもたらしました。今後の解析では、OCS関連の有害な健康事象への影響を調査する予定です。