注目論文:COPDに対する抗IL-33抗体トゾラキマブの第2a相試験(FRONTIER-4)

呼吸器内科
COPD治療における新たな生物学的製剤、抗IL-33抗体トゾラキマブの第2a相試験です。主要評価項目である気管支拡張薬吸入前FEV1は未達という結果でしたが、増悪を繰り返す高リスク群では気道閉塞改善や増悪抑制のシグナルが見られました。これは、喘息と同様にCOPDでも特定の患者集団(フェノタイプ)で生物学的製剤が有効である可能性を示唆します。今後の第3相試験で、どの患者に最も利益があるのかが明らかになることを期待したい研究です。
A phase 2a trial of the IL-33 monoclonal antibody tozorakimab in patients with COPD: FRONTIER-4
COPD患者を対象としたIL-33モノクローナル抗体トゾラキマブの第2a相試験:FRONTIER-4
Singh D, Guller P, Reid F, Doffman S, Seppälä U, et al.
Eur Respir J. 2025 Jul 14;66(1):2402231.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40154559/
背景:
インターロイキン-33(IL-33)はCOPDの病態生理に関与している可能性があります。FRONTIER-4試験(NCT04631016)は、2剤または3剤の吸入療法を受けている慢性気管支炎を伴う中等症から重症のCOPD患者を対象に、トゾラキマブ(抗IL-33モノクローナル抗体)を調査しました。

研究デザイン:
FRONTIER-4は、第2a相、ランダム化、二重盲検、プラセボ対照試験です。患者はトゾラキマブ600mgまたはプラセボを4週ごとに24週間皮下投与されました。主要評価項目は、ベースラインから12週目までの気管支拡張薬吸入前1秒量(FEV1)の変化量としました。副次評価項目には、気管支拡張薬吸入後FEV1、初回COPD複合増悪イベントまでの時間、安全性が含まれました。

結果:
Intention-to-treat(ITT)集団には135名の患者が含まれました(トゾラキマブ群67名、プラセボ群68名)。12週時点のITT集団において、トゾラキマブはベースラインからの気管支拡張薬吸入前FEV1の増加を示しましたが、統計的に有意ではありませんでした(最小二乗平均差(LSMD)24 mL, 80% CI -15-63 mL, p=0.216)。一方、気管支拡張薬吸入後FEV1はプラセボと比較して有意な増加を示しました(LSMD 67 mL, 80% CI 17-116 mL, p=0.044)。事前に規定された過去2回以上の増悪歴を有するサブグループでは、トゾラキマブはプラセボに対し、ベースラインからの気管支拡張薬吸入前FEV1の変化量(LSMD 69 mL, 80% CI 9-130 mL, p=0.072)および吸入後FEV1の変化量(LSMD 124 mL, 80% CI 47-201 mL, p=0.020)で改善を示しました。ITT集団ではCOPD複合増悪イベントのリスクを有意に減少しませんでしたが(ハザード比 0.79, 80% CI 0.57-1.11, p=0.186)、過去2回以上の増悪歴のある患者ではより大きな効果がみられました(ハザード比 0.61, 80% CI 0.37-1.00)。結果は元喫煙者と現喫煙者で同様でした。トゾラキマブの忍容性は良好でした。

結論:
ITT集団では主要評価項目は達成されませんでしたが、トゾラキマブは増悪リスクの高いCOPD患者のサブグループにおいて、プラセボに対する有効性のポジティブなシグナルを示しました。