注目論文:がん患者におけるCOVID-19ワクチンブースターの効果と低い接種率
呼吸器内科
がん患者というハイリスク集団におけるCOVID-19ブースターワクチンの有効性を実臨床データで示した重要な研究です。単価・2価ワクチン共に、入院やICU入室を約30%減少させる効果が示され、ワクチン接種必要数(NNV)も許容範囲内です。しかし、特に2価ワクチンの接種率が38%と極めて低い点は看過できません。これはエビデンスと臨床現場の乖離を示すものであり、我々臨床医が積極的に接種を推奨する必要性を強く示唆しています。我々の研究でも高齢者等での有効性を示してきましたが、特に免疫不全者へのアプローチは今後の大きな課題です。
COVID-19 Vaccine Booster Uptake and Effectiveness Among US Adults With Cancer
米国のがん成人患者におけるCOVID-19ワクチンブースターの接種率と有効性
Skarbinski J, Elkin EP, Ziemba YC, et al.
JAMA Oncol. 2025 Jul 17:e252020.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40674059/
米国のがん成人患者におけるCOVID-19ワクチンブースターの接種率と有効性
Skarbinski J, Elkin EP, Ziemba YC, et al.
JAMA Oncol. 2025 Jul 17:e252020.
重要性:
がん患者は重症COVID-19感染症のリスクが高いが、COVID-19ブースターワクチンの追加的な利益は不明確である。
目的:
がん患者における単価COVID-19ワクチンの追加接種によるCOVID-19ワクチン有効性(VE)とワクチン接種必要数(NNV)を評価すること。
研究デザイン、設定、対象者:
米国4つの医療システムにおいて、化学療法または免疫療法を受けているがん患者を対象とした後ろ向きコホート研究。統計解析は2023年3月から2024年8月にかけて実施された。
曝露:
2022年1月1日までに単価COVID-19ワクチンの追加接種を受け、2022年8月31日まで追跡された群、および2022年9月1日から2023年8月31日までに2価COVID-19ワクチンの接種を受けた群。
主要評価項目:
COVID-19による入院、COVID-19と診断された症例、およびCOVID-19関連の集中治療室(ICU)入室。
結果:
72,831人のがん患者(女性17,922人 [24.6%])のうち、69%が2022年1月1日までに単価ブースターを接種した。追跡期間34,006人年において、COVID-19による入院率は単価ブースター接種者で1000人年あたり30.5人であったのに対し、初回シリーズのみの接種者では1000人年あたり41.9人であり、調整後のVEは29.2%(95% CI, 19.9%-37.3%)、COVID-19入院を1件防ぐためのNNVは166(95% CI, 130-244)であった。また、COVID-19診断(VE 8.5% [95% CI, 3.7%-13.0%])およびCOVID-19関連ICU入室(VE 35.6% [95% CI, 20.0%-48.3%])の予防においても有意なVEが認められた。2価ワクチン期間中の追跡期間81,027人年における88,417人のがん患者(女性24,589人 [27.8%])のうち、ブースター接種者(38%)のCOVID-19入院率は1000人年あたり13.4人であったのに対し、2価ワクチン非接種者では1000人年あたり21.7人であり、調整後VEは29.9%(95% CI, 19.4%-39.1%)、NNVは451(95% CI, 345-697)であった。COVID-19関連ICU入室を予防する調整後VEは30.1%(95% CI, 7.7%-47.0%)であった。
結論と関連性:
この後ろ向きコホート研究において、COVID-19ブースターワクチン接種は、がん患者における重症COVID-19に対する有意な防御効果と関連しており、NNVも良好であった。しかし、COVID-19ワクチンブースターの接種率は低く、このハイリスク集団における接種率を向上させるための介入が正当化される。
がん患者は重症COVID-19感染症のリスクが高いが、COVID-19ブースターワクチンの追加的な利益は不明確である。
目的:
がん患者における単価COVID-19ワクチンの追加接種によるCOVID-19ワクチン有効性(VE)とワクチン接種必要数(NNV)を評価すること。
研究デザイン、設定、対象者:
米国4つの医療システムにおいて、化学療法または免疫療法を受けているがん患者を対象とした後ろ向きコホート研究。統計解析は2023年3月から2024年8月にかけて実施された。
曝露:
2022年1月1日までに単価COVID-19ワクチンの追加接種を受け、2022年8月31日まで追跡された群、および2022年9月1日から2023年8月31日までに2価COVID-19ワクチンの接種を受けた群。
主要評価項目:
COVID-19による入院、COVID-19と診断された症例、およびCOVID-19関連の集中治療室(ICU)入室。
結果:
72,831人のがん患者(女性17,922人 [24.6%])のうち、69%が2022年1月1日までに単価ブースターを接種した。追跡期間34,006人年において、COVID-19による入院率は単価ブースター接種者で1000人年あたり30.5人であったのに対し、初回シリーズのみの接種者では1000人年あたり41.9人であり、調整後のVEは29.2%(95% CI, 19.9%-37.3%)、COVID-19入院を1件防ぐためのNNVは166(95% CI, 130-244)であった。また、COVID-19診断(VE 8.5% [95% CI, 3.7%-13.0%])およびCOVID-19関連ICU入室(VE 35.6% [95% CI, 20.0%-48.3%])の予防においても有意なVEが認められた。2価ワクチン期間中の追跡期間81,027人年における88,417人のがん患者(女性24,589人 [27.8%])のうち、ブースター接種者(38%)のCOVID-19入院率は1000人年あたり13.4人であったのに対し、2価ワクチン非接種者では1000人年あたり21.7人であり、調整後VEは29.9%(95% CI, 19.4%-39.1%)、NNVは451(95% CI, 345-697)であった。COVID-19関連ICU入室を予防する調整後VEは30.1%(95% CI, 7.7%-47.0%)であった。
結論と関連性:
この後ろ向きコホート研究において、COVID-19ブースターワクチン接種は、がん患者における重症COVID-19に対する有意な防御効果と関連しており、NNVも良好であった。しかし、COVID-19ワクチンブースターの接種率は低く、このハイリスク集団における接種率を向上させるための介入が正当化される。