注目論文:SABAの使いすぎは死亡・増悪リスクを2倍にする

呼吸器内科
SABA(短時間作用性β2刺激薬)単独療法が推奨されなくなって久しいですが、その根拠を改めて強く裏付けるメタ解析です。年間3本以上のSABA使用(SABAの過剰使用)は、死亡リスクと急性増悪リスクを約2倍に増加させることが示されました。これは週に2-3回以上、発作的に吸入器を使用している状態に相当します。SABAを「お守り」のように多用している患者さんがいたら、それはコントロール不良の危険なサインです。抗炎症作用のあるコントローラー治療の重要性を再認識させられます。
Adverse Outcomes Associated With Short-Acting Beta-Agonist Overuse in Asthma: A Systematic Review and Meta-Analysis
喘息における短時間作用性β2刺激薬(SABA)の過剰使用に関連する有害な転帰:システマティックレビューとメタアナリシス
Tsao CL, Chan SY, Lee MH, Hsieh TYJ, Phipatanakul W, Ruran HB, Ma KS.
Allergy. 2025 Jun 10.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40491263/
背景:
2019年の喘息管理と予防のためのグローバル・イニシアティブ(GINA)報告書では、関連する合併症と抗炎症作用の欠如を理由に、短時間作用性β2刺激薬(SABA)単独療法はもはや推奨されなくなりました。このシステマティックレビューとメタアナリシスは、喘息患者におけるSABAの過剰使用に関連する有害な転帰を評価することを目的としました。

研究デザイン:
1981年から2023年11月までの期間、PubMed、Cochrane Library、EMBASE、Web of Scienceのデータベースを検索し、喘息患者におけるSABAの過剰使用(年間SABAキャニスター3本以上)に関する研究を対象としました。ランダム化比較試験(RCT)、コホート研究、横断研究を含めました。全死因死亡率および急性増悪の二値尺度について、ランダム効果モデルおよびMantel-Haenszel重み付けを用いて統合リスク比(RR)を算出しました。研究デザインに基づいたサブグループ解析を実施しました。

結果:
626件の記録から、27件の研究(RCT2件、前向きコホート研究1件、後ろ向きコホート研究12件、横断研究12件)が組み入れられました。SABAの過剰使用(年間3本以上)は、対照群と比較して有意に高い死亡率(過剰使用群130,629人中2743人 vs 対照群300,451人中3534人; RR = 2.04, 95%信頼区間, CI = 1.37-3.04; p < 0.001)および有意に高い急性増悪率(過剰使用群165,271人中60,320人 vs 対照群376,845人中84,439人; RR = 1.93, 95% CI = 1.24-3.03; p < 0.001)と関連していました。急性増悪リスクの増加は、後ろ向きコホート研究および横断研究で観察されました。

結論:
SABAの過剰使用は、喘息患者における死亡率および急性増悪率の増加と関連しており、喘息管理においてSABA単独療法を推奨しないガイドラインを支持するものでした。