注目論文:PPFの診断:FVC/DLCOの相対的低下で十分か?

呼吸器内科
進行性肺線維症(PPF)の定義は、抗線維化薬の導入を判断する上で極めて重要です。本研究は、国際ガイドラインで示されている症状・画像・生理機能の複合的な基準を用いなくても、FVCの10%以上の相対的低下、あるいはDLCOの15%以上の相対的低下という単独の生理学的指標が、2年後の死亡や肺移植を予測する上で同等の有用性を持つことを示しました。ただし、いずれの指標も特異度は高いものの感度が低い点には注意が必要です。つまり、これらの基準を満たさないからといって進行を否定できず、臨床経過を総合的に判断する重要性を再確認させられます。
Performance Characteristics for Physiological Measures of Progressive Pulmonary Fibrosis
進行性肺線維症の生理学的指標における性能特性
Newton CA, Thenappan A, Liu GY, et al.
Am J Respir Crit Care Med. 2025 Jun 18.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40530983/
背景:
進行性肺線維症(PPF)の臨床的指標は提案されていますが、その臨床的有用性は依然として不明確です。

目的:
臨床的に重要な転帰を識別するための新しいガイドライン基準を含む、肺機能に基づくPPF指標の性能特性を明らかにすること。

研究デザイン:
米国、英国、カナダの線維性間質性肺疾患患者(n=2727)を対象とした多施設共同後ろ向きコホート解析を実施し、努力性肺活量(FVC)および肺拡散能(DLCO)の低下に関する8つのカテゴリー指標、ならびにPPFガイドライン基準(呼吸器症状の悪化、FVCの5%以上の絶対的低下またはDLCOの15%以上の絶対的低下、画像上の進行、のうち2つを満たす)が、2年以内の死亡または肺移植を識別する性能を評価しました。治療開始の判断材料としての最良指標の純便益を、デシジョンカーブを用いて比較しました。

結果:
FVCの10%以上の相対的低下、DLCOの15%以上の相対的低下、およびPPFガイドライン基準に従って分類されたPPFが、最も良好な全体的テスト性能を示し、ROC曲線下面積は0.67-0.68でした。評価された全ての指標で特異度は感度よりも高く、肺機能低下の相対的指標は絶対的指標よりも性能が優れていました。FVC≥10%またはDLCO≥15%の相対的低下という単独指標の純便益は、治療確率の閾値範囲全域でPPFガイドライン基準と同様でした。

結論:
FVCおよびDLCOの低下という単独の指標でPPFを分類することは、PPFガイドライン基準と同様の臨床的有用性を提供します。最も性能の良い生理機能に基づくPPF指標は、高い特異度で転帰を識別しますが、感度は低いです。