注目論文:COVID-19ワクチンへの躊躇、その背景にある複雑な要因

呼吸器内科
ワクチン躊躇は公衆衛生上の大きな課題ですが、その背景は一様ではありません。本研究は、ワクチンを躊躇する人々の背景を定量的・定性的に分析した貴重な報告です。躊躇の要因として、副反応への懸念や政府・医療機関への不信感が挙げられる点は、本邦の状況とも重なります。特に興味深いのは、最終的に接種に至った躊躇者(hesitant adopters)と、接種を拒否した者を分けた重要な因子が、「他者を守る」といったワクチン接種の利益を認識している点であったことです。この知見は、臨床現場で患者さんと向き合う際のコミュニケーションや、今後の公衆衛生キャンペーンを立案する上で、極めて重要な示唆を与えてくれるでしょう。
The complex landscape of vaccine hesitancy and hesitant adopters: Quantitative predictors and thematic insights into COVID-19 vaccine attitudes
ワクチン躊躇と躊躇する接種者の複雑な状況:COVID-19ワクチンへの態度に関する定量的予測因子と主題的洞察
Annandale G, Kola-Palmer S, Duke É.
Hum Vaccin Immunother. 2025 Dec;21(1):2511350.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40540028/
背景:
ワクチン躊躇は公衆衛生に対するトップ10の脅威の一つです。COVID-19パンデミックと関連するワクチン接種は、ワクチン躊躇にとって分水嶺となる出来事であり、大々的に報道された反ワクチン抗議や、新規ワクチンに対する広範な誤情報と不信感が特徴的でした。この混合研究法による調査は、COVID-19ワクチン接種の文脈におけるワクチン躊躇と、躊躇するワクチン接種者についてのニュアンスに富んだ理解を提供することを目的としました。

研究デザイン:
N=410人の参加者が、ワクチン躊躇、性格、陰謀論的信念、政治的所属に関する一連の心理測定尺度からなるオンライン調査を完了しました。新規ワクチンに対して躊躇していると自己認識したN=134人の参加者は、COVID-19ワクチン接種をためらった理由を詳述する追加の自由記述回答を提出しました。

結果:
定量的な分析結果では、男性、高校および大学レベルの教育歴を持つ者、混合民族および少数民族グループ(黒人、アジア系)、そして右派権威主義(Right-Wing Authoritarianism)および陰謀論的信念が高い者において、より高いワクチン躊躇が示されました。定性的なデータからは、躊躇の根底にある6つのテーマが明らかになりました:副作用への懸念、COVIDのリスク認識、陰謀論および宗教的信念、知覚された強制に対する心理的リアクタンス、情報不足の認識、そして政府・医療機関への不信感です。決定的に重要な点として、他者を守るなどといったワクチンの利益を認識していることが、ワクチンを躊躇しながらも接種した者と拒否した者を区別する要因でした。

結論:
本研究の知見は、ワクチンを躊躇する接種者を対象とした政策や公衆衛生キャンペーンに情報を提供することを視野に入れて議論されています。