注目論文:米国における特発性肺線維症死亡率の産業・職業別分析

呼吸器内科
本論文は米国CDCによる2020-2022年の死亡データを用いた特発性肺線維症(IPF)死亡の産業・職業別分析です。IPF死亡者の約21%が職業曝露に関連している可能性が示唆されており、男性では公共事業、女性では公務員で比例死亡比が高値でした。特に男性のコミュニティ・社会サービス従事者や女性の農業・漁業・林業従事者でのIPF死亡率が顕著でした。日本でもじん肺や石綿関連疾患の管理は重要課題ですが、本研究はIPFと職業曝露の関連を示す重要なエビデンスであり、産業保健における有害物質対策の重要性を再認識させる内容と言えます。
Idiopathic Pulmonary Fibrosis Mortality by Industry and Occupation - United States, 2020-2022
米国における特発性肺線維症死亡率の産業・職業別分析 —2020年から2022年—
Mazurek JM, Syamlal G, Weissman DN.
MMWR Morb Mortal Wkly Rep. 2025 Mar 6;74(7):109-115.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40048397/
背景:
特発性肺線維症(IPF)は肺の瘢痕形成と肺機能の悪化を特徴とする進行性の肺疾患であり、予後不良です。最近のシステマティックレビューによると、IPF死亡の21%が職業曝露に起因する可能性があると推定されています。米国疾病対策予防センター(CDC)は、産業別・職業別の米国におけるIPF死亡率を明らかにするため、2020年から2022年の複数原因死亡データを用いた探索的分析を実施しました。

研究デザイン:
CDCは15歳以上で就労経験のある米国居住者を対象に、2020年から2022年の複数原因死亡データを分析しました。産業別・職業別のIPF死亡者数と比例死亡比を算出し、職業曝露との関連を評価しました。

結果:
2020年から2022年の3年間で、合計67,843人(男性39,712人[59%]、女性28,131人[41%])がIPFで死亡していました。これは男性で8,340人、女性で5,908人のIPF死亡が職業曝露と関連している可能性を示唆しています。産業グループ別では、男性では公共事業(1.15)、女性では公務員(1.12)で最も高い比例死亡比が見られました。職業グループ別では、男性ではコミュニティ・社会サービス従事者(1.23)、女性では農業・漁業・林業従事者(1.24)で最も高いIPF死亡率が認められました。

結論:
特定の産業や職業に従事する労働者間でのIPF死亡率の上昇は、既知の曝露関連リスク因子の管理と、IPF発症リスクを高める可能性のある職業曝露の全範囲をより理解するための継続的なサーベイランスの必要性を示しています。これらの結果は、職業曝露とIPFの関連についての理解を深め、予防戦略の開発に役立つ可能性があります。