注目論文:日本の小児における侵襲性肺炎球菌感染症の全国サーベイランス:13価肺炎球菌結合型ワクチンとCOVID-19パンデミックの影響

呼吸器内科
小児の侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)は予防接種の普及により大幅に減少しましたが、本研究はPCV13導入後の日本における9年間の疫学動態を示した貴重なデータです。特筆すべきは、PCV13導入により従来の血清型による感染が減少した一方で、非PCV13血清型(特に24F型)の増加という血清型置換現象が明確に示されたこと、さらにCOVID-19パンデミック期間中にIPD発生率が約50%減少したことです。
Nationwide population-based surveillance of invasive pneumococcal disease in children in Japan (2014-2022): Impact of 13-valent pneumococcal conjugate vaccine and COVID-19 pandemic
日本の小児における侵襲性肺炎球菌感染症の全国サーベイランス(2014-2022):13価肺炎球菌結合型ワクチンとCOVID-19パンデミックの影響
Takeuchi N, Chang B, Ishiwada N, Cho Y, Nishi J, Okada K, Fujieda M, Oda M, Saitoh A, Hosoya M, Ishiguro N, Takahashi K, Ozawa Y, Suga S.
Vaccine. 2025 Apr 18;54:127138.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40252365/
背景:
日本では13価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV13)導入後の小児侵襲性肺炎球菌感染症(IPD)の状況を明らかにするために全国的なサーベイランスが実施されました。

研究デザイン:
2014年1月から2022年12月までの期間、日本の47都道府県のうち10都道府県から15歳未満の小児IPD症例の詳細な臨床・疫学情報を収集しました。無菌部位から分離された肺炎球菌株について、莢膜血清型、多座位配列タイピング(MLST)、抗菌薬感受性試験などの解析を実施しました。血清型特異的IPD発生率は、不明分離株の血清型を既知の血清型分布に基づいて推定して計算されました。

結果:
研究期間中に1033例のIPD症例が報告されました。5歳未満の患者におけるIPD全体の発生率は、PCV13導入前の2011年から2013年と比較して、2014年から2019年にかけて21.3%減少しました。COVID-19パンデミック期間である2020年から2022年と2014年から2019年のIPD発生率を比較すると、5歳未満の小児におけるIPD発生率は49.7%減少しました。合計932例のIPD症例で莢膜血清型が同定され、5歳未満の小児では最も頻度の高い血清型は24F型で、次いで15A型、12F型、15C型、15B型、10A型でした。2013年のPCV13への切り替え後、PCV13からPCV7を引いた血清型によるIPDの発生率は減少し、非PCV13血清型はさらに増加しました。5歳未満の小児におけるIPDの原因となる血清型のうち、PCV15特有の血清型とPCV20特有の血清型はそれぞれ8.6%と22.5%でした。抗菌薬感受性に関しては、PCV13導入後にペニシリンとセフォタキシム耐性株は減少した一方、メロペネム非感受性株は増加しました。

結論:
PCV13の導入とCOVID-19パンデミックは日本の小児IPDに重大な影響を与えました。PCV20導入後の小児IPDの疫学的特徴を継続的にモニタリングすることが重要です。