注目論文:資源の限られた環境でSt. George's呼吸器質問票を用いたCOPDのスクリーニング法

呼吸器内科
COPDの診断に不可欠なスパイロメトリー検査は世界中で限られた資源であり、特に低中所得国ではアクセスが困難です。本研究はSt. George's呼吸器質問票(SGRQ)とピークフローメーターを組み合わせた簡易なスクリーニング法の有効性を示しました。SGRQスコア12点以上かつ/または男性ではピークフロー400L/分未満、女性では250L/分未満というカットオフ値により、感度91%、特異度47%、陰性的中率98%とCOPD診断に有用であることが示されています。スパイロメトリーへのアクセスが限られた環境でも実施可能なこのスクリーニング戦略は、今後の早期診断や介入に大きく貢献する可能性があります。
Population-based Screening for Chronic Obstructive Pulmonary Disease Using the St. George's Respiratory Questionnaire in Resource-limited Settings
資源の限られた環境でSt. George's呼吸器質問票を用いた慢性閉塞性肺疾患の集団ベーススクリーニング
William Checkley MD PhD, Mingling Yang MS, Nicole M Robertson MD, MPH, Arun K Sharma MD, Ram K Chandyo PhD, Laxman Shrestha MD, Santa K Das MD, Bruce Kirenga MBChB, MMed, Patricia Alupo MBChB, MMed, Gonzalo Gianella MD, Trishul Siddharthan MD, Suzanne L Pollard PhD, 他
AJRCCM Articles in Press. Published March 11,
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40068167/
背景:
スパイロメトリーはCOPD診断に必要不可欠ですが、世界中で高価かつ希少なリソースとなっています。スクリーニング質問票はこの診断格差を埋める助けになる可能性があります。

研究デザイン:
ネパールのバクタプル、ペルーのリマ、ウガンダのナカセケにおいて40歳以上の成人を対象にCOPDスクリーニングを実施しました。参加者はSGRQ質問票に回答し、気管支拡張薬投与前のピークフロー(PEF)を測定しました。COPDは気管支拡張薬投与後のFEV1/FVC Z-scoreが-1.645未満と定義し、ROC曲線を用いてSGRQのスクリーニング性能を評価し、スパイロメトリー確認COPDに対する最適なカットオフ値を特定しました。

結果:
10,709人の参加者(平均年齢56.3歳、49.7%が男性、15.4%が現在喫煙者)をスクリーニングしました。データ欠損と不適切な値を除外した後、10,008人(94%)のデータを分析しました。スパイロメトリー確認COPDの有病率は9.5%でした。SGRQの平均(±SD)総スコアは7.9±11.9点、COPDを有する参加者では20.3±19.4点、COPD非保有者では6.6±9.9点でした。COPDスクリーニングツールとしてのSGRQのROC曲線下面積(AUC)は0.77(95%CI 0.75-0.79)、最適カットオフ値は10.75点でした。SGRQに性別で層別化した気管支拡張薬投与前PEFを組み合わせると、AUCは0.84(95%CI 0.82-0.85)に向上しました。SGRQスコア12点以上かつ/または男性ではPEF 400L/分未満、女性では250L/分未満のスクリーニング法は、感度91%、特異度47%、陰性的中率98%という結果を示しました。

結論:
SGRQはスパイロメトリー確認COPDのスクリーニングツールとして代替可能です。SGRQとPEFを組み合わせたスクリーニングは、スパイロメトリーが容易に利用できない資源制限のある環境でCOPDリスク者を特定するのに役立つ可能性があります。