注目論文:自己免疫性間質性肺疾患における画像所見と免疫抑制治療効果の関連性

呼吸器内科
強皮症や関節リウマチに伴う間質性肺疾患(ILD)において、すりガラス影や線維化など画像所見の定量的評価と免疫抑制治療の効果との関連を検討した貴重な研究です。興味深いことに、強皮症ILD患者ではシクロホスファミド治療群において、予想に反して線維化所見が強いほど肺機能改善と関連していました。ILDの画像パターンによる治療選択の個別化が期待されていますが、本研究は「炎症>線維化なら免疫抑制剤が効く」という単純な図式ではない可能性を示唆しています。今後の治療戦略構築に影響を与える重要な知見と言えるでしょう。
Impact of quantitative radiological features of interstitial lung disease on immunomodulatory treatment response in three autoimmune interstitial lung disease cohorts
自己免疫性間質性肺疾患の3つのコホートにおける免疫調節治療反応に対する間質性肺疾患の定量的放射線学的特徴の影響
Matson SM, Kim GHJ, Humphries SM, Roth MD, Goldin J, Tashkin DP, Leng M, England BR, Lee JS, Volkmann ER.
Thorax. 2025 Apr 10.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40210443/
背景:
自己免疫性間質性肺疾患(ILD)の特徴的な放射線学的所見はすりガラス影(GGO)と線維化です。これらの特徴と免疫調節治療に対する生理学的反応との関連性は依然として不明確です。

研究デザイン:
本研究では、線維化の程度/パターンに固有の違いがあるよう選択された3つの自己免疫性ILDコホート(全身性強皮症(SSc)の2コホートと関節リウマチ(RA)の1コホート)を活用しました。線形回帰モデルを用いて、ベースラインの定量的GGO、線維化、それらの比率と、12ヶ月間の免疫調節療法後の努力性肺活量(FVC)%予測値の変化との関連性を検討しました。

結果:
SSc-ILD患者(N=262)はRA-ILD患者(N=130)と比較してGGOと線維化の比率が高いことが示されました(平均比率3.0対0.25)。GGOと線維化の比率の増加はいずれのコホートにおいてもFVC%予測値の改善との関連は認められませんでした。逆に、シクロホスファミド(CYC)で治療されたSSc-ILD患者では、線維化の増加(推定値0.17(95% CI 0.003, 0.33);p=0.04)とGGOの増加(推定値0.15(95% CI 0.004, 0.30);p=0.044)の両方がFVC%の改善と有意に関連していました。GGOと線維化の比率の推定値の方向が負であることを考慮すると(推定値-0.33(95% CI -0.61, -0.06);p=0.016)、CYCはGGOに対して線維化の程度が高い患者においてより大きなFVC%の改善と関連していました。ミコフェノール酸で治療されたSSc-ILD患者(N=56)や免疫調節治療を受けたRA-ILD患者(N=130)では有意な相関は認められませんでした。

結論:
RA-ILDおよびSSc-ILD患者において、線維化に対する定量的GGOの増加は免疫調節療法への反応改善と有意に関連していませんでした。しかし、SSc-ILDでは、定量的線維化とGGOの程度の増加がCYC療法への反応改善と関連していました。ILDにおける治療選択に放射線学的特徴をどのように活用するかを理解するためにはさらなる研究が必要です。