注目論文:病理・CT画像の統合AIによる間質性肺疾患診断の精度向上

呼吸器内科
間質性肺疾患(ILD)、特に通常型間質性肺炎(UIP)の診断は多分野連携アプローチが必要とされる難しい課題です。本研究では、CT画像と病理画像を統合したマルチモーダルAIアルゴリズムを開発し、一般病理医のUIP診断精度が専門医レベルに向上することを示しています。κスコアが0.273から0.737へと著明に改善した点は特筆に値します。日常診療では呼吸器専門病理医がいない施設も多く、このようなAIツールは診断精度の標準化と向上に大きく貢献する可能性があります。
Enhancing Interstitial Lung Disease Diagnoses Through Multimodal AI Integration of Histopathological and CT Image Data
病理組織学的およびCT画像データのマルチモーダルAI統合による間質性肺疾患診断の向上
Lami K, Ozasa M, Che X, Uegami W, Kato Y, Zaizen Y, Tsuyama N, Mori I, Ichihara S, Yoon HS, Egashira R, Kataoka K, Johkoh T, Kondo Y, Attanoos R, Cavazza A, Marchevsky AM, Schneider F, Augustyniak JW, Almutrafi A, Fabro AT, Brcic L, Roden AC, Smith M, Moreira A, Fukuoka J.
Respirology. 2025 Apr 2. doi: 10.1111/resp.70036.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40176267/
背景:
間質性肺疾患(ILD)の診断は、様々な臨床、放射線、病理組織学的データの統合に依存しています。ILD、特に通常型間質性肺炎(UIP)の診断精度を高めることは困難であり、多分野連携アプローチが必要です。そこで本研究では、CT画像と病理組織画像を組み合わせたマルチモーダル人工知能(AI)アルゴリズムを開発し、UIP診断の精度と一貫性を向上させることを目的としました。

研究デザイン:
2009年から2021年の間に間質性肺疾患と診断された324患者のCTおよび病理画像データセットを収集しました。モデルのCTコンポーネントは28種類の放射線学的特徴を識別するよう訓練されました。病理コンポーネントは我々の以前の研究で開発されたものを使用しました。合計114のサンプルを選択し、マルチモーダルAIモデルのテストに使用しました。マルチモーダルAIの性能は、専門病理医と一般病理医との比較を通じて評価されました。

結果:
開発されたマルチモーダルAIは、UIPと非UIPの識別において著しい改善を示し、AUC 0.92を達成しました。一般病理医が使用した場合、診断一致率は有意に向上し、モデル導入前のκスコア0.273からモデル導入後は0.737に改善しました。さらに、専門呼吸器病理医との診断一致率もモデル導入前のκスコア0.278-0.53からモデル導入後は0.474-0.602に向上しました。また、このモデルは一般病理医の診断確信度も向上させました。

結論:
CTと病理組織画像を組み合わせたマルチモーダルAIアルゴリズムは、専門的な知識が限られている場合でも、UIPの同定における病理医の診断精度、一貫性、および確信度を高めます。