「臨床研究」は遠い存在ではなく、とても身近なところにある。
臨床研究
本日は、臨床研究・論文執筆について少し触れてみたいと思います。
臨床研究・論文執筆と聞くと、医学生・研修医・若手医師の皆さんは、「臨床研究や論文なんて、自分には遠い存在だ」と思うかもしれません。
臨床研究は分かりやすく言うと、自分が臨床をやっていて「〇〇って実は××なんじゃないの?」(= 臨床疑問に対する仮説)と思ったことを確かめる作業です。
臨床をやっていたら必ず皆いくつかの臨床疑問(=Clinical question)を持っているはずです。
私の場合は、後期研修医~医員の時に「非HIVニューモシスチス肺炎の治療にST合剤は4錠~6錠で十分なのでは?」、「膿胸の治療をするときに胸腔ドレーンは肺底部でなく,背側上方の留置でも良いのでは?」という臨床疑問と仮説を持ち始めました。
その後、これらの仮説を臨床研究で検証して論文化しています。
臨床研究・論文執筆と聞くと、医学生・研修医・若手医師の皆さんは、「臨床研究や論文なんて、自分には遠い存在だ」と思うかもしれません。
臨床研究は分かりやすく言うと、自分が臨床をやっていて「〇〇って実は××なんじゃないの?」(= 臨床疑問に対する仮説)と思ったことを確かめる作業です。
臨床をやっていたら必ず皆いくつかの臨床疑問(=Clinical question)を持っているはずです。
私の場合は、後期研修医~医員の時に「非HIVニューモシスチス肺炎の治療にST合剤は4錠~6錠で十分なのでは?」、「膿胸の治療をするときに胸腔ドレーンは肺底部でなく,背側上方の留置でも良いのでは?」という臨床疑問と仮説を持ち始めました。
その後、これらの仮説を臨床研究で検証して論文化しています。
(Chest. 2024 Jan;165(1):58-67.、BMC Pulm Med. 2022 Sep 20;22(1):358.))
このように臨床研究というのは、「自分たちが臨床をやっていて、普段感じる疑問を検証する」というとても身近なところにあるのです。
臨床研究をやって論文にしなかったら、上記の仮説は、私のたたの妄想(笑)や個人の経験・感覚に終わってたかもしれません。
でも、臨床研究で検証することで、エビデンスとして世の中に出し、医学の発展に微力ながらも貢献できたと感じています。
このように臨床研究というのは、「自分たちが臨床をやっていて、普段感じる疑問を検証する」というとても身近なところにあるのです。
臨床研究をやって論文にしなかったら、上記の仮説は、私のたたの妄想(笑)や個人の経験・感覚に終わってたかもしれません。
でも、臨床研究で検証することで、エビデンスとして世の中に出し、医学の発展に微力ながらも貢献できたと感じています。
実は私も、医師3年目くらいの頃は、「臨床研究なんて自分には遠い存在だ」、と思っていました。
でも、亀田総合病院に来て自分の同期がせっせと臨床研究をやって、論文を書いているのを見ると、だんだんと「自分でもできるかもしれない」と思い始めました。
そして、最初は日本語の症例報告にチャレンジして、次に英語の症例報告、最後に英語のOriginal article(=複数の症例を集積して解析した臨床研究論文)にチャレンジしました。
私が初めて書いたOriginal articleは下記です。初めてのアクセプトは本当に嬉しかったことを覚えています。
Nakashima K, Aoshima M, Ohkuni Y, Hoshino E, Hashimoto K, Otsuka Y. Loop-mediated isothermal amplification method for diagnosing Pneumocystis pneumonia in HIV-uninfected immunocompromised patients with pulmonary infiltrates. J Infect Chemother. 2014 Dec;20(12):757-61. doi: 10.1016/j.jiac.2014.08.005. Epub 2014 Aug 31. PMID: 25187511.
でも、亀田総合病院に来て自分の同期がせっせと臨床研究をやって、論文を書いているのを見ると、だんだんと「自分でもできるかもしれない」と思い始めました。
そして、最初は日本語の症例報告にチャレンジして、次に英語の症例報告、最後に英語のOriginal article(=複数の症例を集積して解析した臨床研究論文)にチャレンジしました。
私が初めて書いたOriginal articleは下記です。初めてのアクセプトは本当に嬉しかったことを覚えています。
Nakashima K, Aoshima M, Ohkuni Y, Hoshino E, Hashimoto K, Otsuka Y. Loop-mediated isothermal amplification method for diagnosing Pneumocystis pneumonia in HIV-uninfected immunocompromised patients with pulmonary infiltrates. J Infect Chemother. 2014 Dec;20(12):757-61. doi: 10.1016/j.jiac.2014.08.005. Epub 2014 Aug 31. PMID: 25187511.
症例報告(Case report)とOriginal articleには、難易度に大きな差があり、上記の論文を出す前に書いた結核に関するOriginal articleは、あっさりリジェクトとなり、お蔵入りになっています(笑)。
今思えば、リジェクトになった論文は、臨床研究で重要なFINERを満たしておらず、非常にお粗末な内容でした><。
「FINER」は研究課題を設定する際の重要な基準を示す頭字語です。
それぞれの文字は以下の要素を表しています:
Feasible(実行可能性):研究が現実的な時間、コスト、技術的能力の範囲内で実行可能であること
Interesting(興味深さ):研究テーマが研究者自身や学術コミュニティにとって興味深いものであること
Novel(新規性):研究が既存の知識に新たな情報を追加するものであること
Ethical(倫理的):研究が倫理的基準を満たし、被験者の権利と福利を保護すること
Relevant(関連性):研究が科学的知識の発展、臨床実践や健康政策に関連性があること。つまり臨床的意義があること。
私がリジェクトになった結核に関する論文は上記のうち、Novel(新規性)、Relevant(関連性)に欠けていました><。
私はほぼ独学で臨床研究を学び、自力で自施設と自施設外に指導者を探し、臨床研究の技術習得に、非常に苦労してきた経緯があります。
色々苦労の末わかった結論として、若手医師が、臨床研究を実施するには「臨床メンター」と「統計メンター」の2名が必須であることです。
「臨床メンター」は、臨床医であり、かつ臨床研究でOriginal articleの執筆経験が複数あり、臨床研究全般をわかっているメンターです。市中病院では、部長クラスの管理者の先生になるかと思います。
「統計メンター」は、臨床疫学・生物統計に長けたメンターです。できれば、MPH、PhDを有する臨床疫学・生物統計の専門家が望ましいです。
臨床研究に必要な臨床疫学・生物統計の知識・技術は、年々高度になっており、ある程度の雑誌に出した場合は、必ずと言って良いほど生物統計の専門家も査読者に入って来て、追加解析を求められます。
これを臨床医だけで対応するのは現実的に困難と私は感じています。
ぜひ、医学生・研修医・若手医師の先生は、将来、臨床研究に取り組んで欲しいと思います。
臨床研究は、最初は大変かもしれませんが、非常にやりがいがあり、自分自身の臨床に深みも作ってくれます。
ただし、臨床研究には、上記で示した「臨床メンター」と「統計メンター」を備えた指導環境は必要です。
でも、指導環境さえあれば、臨床研究は、皆がその気になればできるし、やりがいをもってできる取り組みだと考えています。
ぜひ、自分のキャリアの中で臨床研究をやりたいと思ったときは、働く施設を見学する際に、「臨床メンター」が存在するか、「統計メンター」へのアクセスがあるか、を確認すると良いと思います。
自分のキャリアで臨床研究を経験する上で、参考になれば幸いです。
臨床研究は、最初は大変かもしれませんが、非常にやりがいがあり、自分自身の臨床に深みも作ってくれます。
ただし、臨床研究には、上記で示した「臨床メンター」と「統計メンター」を備えた指導環境は必要です。
でも、指導環境さえあれば、臨床研究は、皆がその気になればできるし、やりがいをもってできる取り組みだと考えています。
ぜひ、自分のキャリアの中で臨床研究をやりたいと思ったときは、働く施設を見学する際に、「臨床メンター」が存在するか、「統計メンター」へのアクセスがあるか、を確認すると良いと思います。
自分のキャリアで臨床研究を経験する上で、参考になれば幸いです。