注目論文:長期酸素療法が急性増悪と入院負荷に与える影響:全国規模のDISCOVERY研究

呼吸器内科
在宅酸素療法(LTOT)は重症安静時低酸素血症患者の生命予後を改善することは周知でしたが、入院抑制効果は不明確でした。本研究は1万人を超えるCOPD患者のほか、間質性肺疾患やPHを含む大規模コホートで、LTOT導入前後の急性増悪と入院負荷を比較しています。特にCOPD患者ではLTOT導入後に総増悪・入院を要する増悪・全原因入院がいずれも有意に減少し、高CO2血症の有無を問わず効果が認められました。外来受診は増加しますが、これは適切な外来管理の強化によるものと考えられます。日常診療においてLTOTは予後改善だけでなく医療資源の効率的活用にも寄与することを示す貴重なエビデンスです。
Effects of long-term oxygen therapy on acute exacerbation and hospital burden: the national DISCOVERY study
長期酸素療法が急性増悪と入院負荷に与える影響:全国規模のDISCOVERY研究
Khor YH, Palm A, Wong AW, Guler SA, Björklund F, Ahmadi Z, Sundh J, Ryerson CJ, Ekström M
Thorax. 2025 Mar 20
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40113248/
背景:
長期酸素療法(LTOT)は慢性の重度安静時低酸素血症患者の生存率を改善することが知られているが、入院に対する効果は不明である。本研究では、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、間質性肺疾患(ILD)、肺高血圧症(PH)患者におけるLTOT開始が急性増悪と入院負荷に与える潜在的影響を評価した。

研究デザイン:
スウェーデンの人口ベースDISCOVERYコホートにおいて、2000年から2018年の間にLTOTを開始し、3ヶ月以上の追跡期間があった連続患者の縦断的解析を行った。基礎疾患の総急性増悪数と入院を要する急性増悪数、全原因入院数、全原因外来受診数を年率化し、各疾患コホートにおいてLTOT開始前後の1年間で比較した。また、COPD患者については高CO2血症の有無別にも検討した。

結果:
COPD患者(n=10,134)では、LTOT開始後に総急性増悪率、入院を要する急性増悪率、および全原因入院率の有意な減少が認められた。一方、ILD(n=2,507)およびPH(n=850)患者ではこれらの指標が増加した。全原因外来受診はすべてのコホートでLTOT開始後に増加した。高CO2血症および非高CO2血症のCOPD患者でも同様の結果が観察された。12ヶ月の追跡期間がある患者の感度分析では、ILDおよびPHコホートでも急性増悪および全原因入院の減少が示された。

結論:
LTOTはCOPD患者、および12ヶ月の追跡期間のあるILDとPH患者において、総急性増悪率と入院を要する急性増悪率および全原因入院率の減少と関連している。LTOT開始後はすべての疾患群で全原因外来受診が増加している。