注目論文:広範囲型小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ+CE療法の有効性と安全性:日本における観察研究J-TAIL-2

呼吸器内科
IMpower133試験の結果を受けて承認された広範囲型小細胞肺癌(ES-SCLC)に対するアテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド(CE)療法の日本の実臨床データが示されました。臨床試験では除外されがちなPS不良例や間質性肺疾患、自己免疫疾患を有する患者を含む400例以上での解析で、有効性は12ヶ月OS率63.7%、生存期間中央値16.5ヶ月でした。安全性についても新たな懸念信号は認められず、特に免疫関連有害事象発現例では長期生存例が多いことも興味深い発見です。日常臨床では様々な合併症を持つ患者に対しても、リスク・ベネフィットを考慮した上での本治療法の適用が支持される重要なデータといえます。
J-TAIL-2: A Prospective, Observational Study of Atezolizumab Combined With Carboplatin and Etoposide in Patients With Extensive-Stage SCLC in Japan
日本における広範囲型SCLCに対するアテゾリズマブとカルボプラチン・エトポシド併用療法の前向き観察研究(J-TAIL-2)
Miyauchi E, Nishio M, Ohashi K, et al.
JTO Clin Res Rep 2025;6:100783
https://doi.org/10.1016/j.jtocrr.2024.100783
背景:
IMpower133試験の結果に基づき、アテゾリズマブ+カルボプラチン+エトポシド(CE)療法は広範囲型小細胞肺癌(ES-SCLC)の一次治療として承認されている。J-TAIL-2研究では実臨床環境下におけるアテゾリズマブ+CE療法の評価を行った。

研究デザイン:
J-TAIL-2は日本で実施された前向き多施設観察研究である。ES-SCLCの患者が実臨床でアテゾリズマブ+CE療法を受けた。主要評価項目は12ヶ月全生存率(OS率)とした。副次評価項目には全生存期間(OS)、無増悪生存期間(PFS)、およびIMpower133不適格群(すなわちECOG PS 2以上、間質性肺疾患、自己免疫疾患など)とIMpower133適格群を含むサブグループにおける安全性が含まれた。

結果:
合計403例が登録され、年齢中央値は71歳、16.6%(67例)がECOG PS 2以上、26.8%(108例)が脳転移、6.9%(28例)が間質性肺疾患、4.0%(16例)が自己免疫疾患を有し、72.7%(293例)がIMpower133不適格であった。有効性解析集団(399例)における12ヶ月OS率は63.7%、OS中央値は16.5ヶ月、PFS中央値は5.1ヶ月であった。IMpower133不適格群と適格群の比較では、12ヶ月OS率はそれぞれ58.5%対77.5%、OS中央値は15.5ヶ月対19.1ヶ月(ハザード比1.32、95%信頼区間:0.98-1.77)、PFS中央値は4.8ヶ月対5.4ヶ月(ハザード比1.14、95%信頼区間:0.90-1.45)であった。安全性解析集団(400例)では新たな安全性シグナルは観察されず、IMpower133不適格群と適格群の安全性プロファイルは類似していた。

結論:
J-TAIL-2では、実臨床におけるES-SCLC患者に対するアテゾリズマブ+CE療法の有効性はIMpower133と一致していた。許容可能な安全性プロファイルと合わせて、これらのデータはIMpower133に不適格であった患者を含む日本のES-SCLC患者におけるアテゾリズマブ+CE療法の使用を支持するものである。