注目論文:EBUS-TBNA検体の採取と取り扱いに関する米国胸部医師会臨床ガイドライン

呼吸器内科
EBUS-TBNA(気管支内視鏡超音波ガイド下針生検)は肺癌の診断・ステージングの標準手技となっていますが、検体の取り扱いや処理に関する指針は限られていました。本ガイドラインは系統的レビューに基づき、診断精度と組織保全のための具体的な検体処理法を9つの推奨事項として提示しています。日常臨床で重要となる「いつ」「どのように」だけでなく、「採取した検体をどう扱うか」という実践的な内容を含むガイドラインであり、質の高いEBUS-TBNA検査の実施に有用です。当院でも検体処理の標準化に活用できる内容で、検査精度向上に寄与するでしょう。今後は分子学的検査への対応など研究の発展が期待されます。
Acquisition and Handling of Endobronchial Ultrasound Transbronchial Needle Samples: An American College of Chest Physicians Clinical Practice Guideline
気管支内視鏡超音波ガイド下経気管支針生検検体の採取と取り扱い:米国胸部医師会臨床診療ガイドライン
Gilbert CR, Dust C, Argento AC, Feller-Kopman D, Gonzalez AV, Herth F, Iaccarino JM, Illei P, O'Neil K, Pastis N, Rivera MP, Sholl L, Silvestri GA, Thiboutot J, Wahidi MM, Yasafuku K, Yarmus LB.
Chest. 2025 Mar;167(3):899-909. doi: 10.1016/j.chest.2024.08.056.
https://journal.chestnet.org/article/S0012-3692(24)05276-0/fulltext
推奨事項の要約
1. 気管支内超音波ガイド下経気管支針生検(EBUS-TBNA)を受ける患者において、検体排出には標準的臨床手法(スタイレット、空気)または代替法(針洗浄)のいずれかを使用することを提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

2. 悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、代替収集培地(ホルマリン、Roswell Park Memorial Institute培地[RPMI]、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水)または現在の臨床慣行(標準的アルコールベースの調製)のいずれかを使用することを提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

3. 悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、通常のケアよりも迅速オンサイト評価(ROSE)の使用を提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

4. 悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、大きい針(19ゲージ)よりも小さい針(21ゲージまたは22ゲージ)の使用を提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

5. 悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、3回以下の針穿刺よりも4回以上の針穿刺を実施することを推奨する(強い推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

6. 非悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、代替収集培地(ホルマリン、RPMI、無菌生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水)または現在の臨床慣行(標準的アルコールベースの調製)のいずれかを使用することを提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

7. 非悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、通常のケアよりも迅速オンサイト評価(ROSE)の使用を提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

8. 非悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、小さい針(21ゲージまたは22ゲージ)または大きい針(19ゲージ)のいずれかを使用することを提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。

9. 非悪性疾患の疑いでEBUS-TBNAを受ける患者において、3回以下の針穿刺よりも4回以上の針穿刺を提案する(条件付き推奨、非常に低い確実性のエビデンス)。