注目論文:CPAP療法による難治性高血圧・睡眠時無呼吸症候群患者の中心・末梢血圧への効果

呼吸器内科
睡眠時無呼吸症候群(OSA)を合併した難治性高血圧患者に対するCPAP療法の有効性を検証した多施設RCTです。特筆すべきは、抗高血圧薬の服薬アドヒアランスをしっかり確認した上で、治療抵抗性の患者を対象にしている点です。診療で直面する「薬をちゃんと飲んでいるのに血圧コントロールがうまくいかない」OSA患者に対するエビデンスとして、非常に実用的な結果です。CPAP使用群では診察室血圧が有意に低下し、24時間血圧コントロール達成率も高く、中心拡張期血圧も低下しています。抗高血圧薬でコントロール不良な患者でのOSAスクリーニングと積極的なCPAP導入を裏付ける重要な研究と言えるでしょう。
Effects of CPAP on Central and Peripheral Blood Pressure in Patients with Uncontrolled Hypertension and OSA: The MORPHEOS Trial
コントロール不良な高血圧と閉塞性睡眠時無呼吸症候群患者における中心・末梢血圧に対するCPAP療法の効果:MORPHEOS試験
Lorenzi-Filho G, Cruz FCSG, Queiróz DBC, Vieira MLC, Pedrosa RP, Couto Patriota TLG, Righi CG, Martinez D, da Silva GA, Silva GV, Pio-Abreu A, Cabrini ML, Giampá SQC, Dórea EL, Lotufo PA, Benseñor IM, Bortolotto LA, Fuchs FD, Drager LF.
Ann Am Thorac Soc. 2025 Jan 29. doi: 10.1513/AnnalsATS.202407-688OC
https://www.atsjournals.org/doi/10.1513/AnnalsATS.202407-688OC
背景:
閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSA)患者におけるCPAP(持続陽圧呼吸療法)の血圧への効果に関する過去の研究では、結果にばらつきがみられる。さらに、多くの研究では正常血圧や降圧薬でコントロールされた患者を対象としており、降圧薬のアドヒアランスが監視されていなかった。また、この状況下での中心血圧を調査した研究は非常に少ない。

研究デザイン:
MORPHEOS試験は、降圧薬の十分な使用にもかかわらずコントロール不良の高血圧(HTN)を持つ中等度から重度のOSA患者に対して、CPAP療法またはプラセボ(鼻拡張テープ-NDS)を6ヶ月間実施し、診察室血圧、24時間自由行動下血圧測定(ABPM)、中心血圧(共同主要評価項目)への効果を評価する多施設無作為化比較試験である。コントロール不良の高血圧は、1ヶ月間の処方薬カウントと80%以上の服薬アドヒアランス確認後、ABPMで1つ以上の異常パラメータがある場合と定義された。処方薬カウント、CPAPまたはNDSへのアドヒアランス、診察室血圧は最初の月は週1回、その後は月1回測定された。

結果:
合計123名の患者が研究を完了した(NDS群:64名、CPAP群:59名)。両群のベースライン特性は類似していた。NDSへのアドヒアランス(80%以上)は98.3%、CPAPへのアドヒアランス(1晩4時間以上)は81.7%であった。NDS群と比較して、CPAP群では診察室収縮期血圧(Δ=-10±16mmHg、p<0.001)および拡張期血圧(Δ=-7±12mmHg、p=0.001)が有意に低下した。CPAPによる血圧低下効果はABPMパラメータでは統計的有意差に達しなかったものの、24時間ABPM管理率(<130/80mmHg)はCPAP群でNDS群よりも高かった(40.7% vs 20%、p=0.024)。中心拡張期血圧も有意に低下した(Δ=-6±9mmHg、調整済みp=0.029)。

結論:
中等度から重度のOSAと降圧薬でコントロール不良な高血圧を持つ患者において、CPAP治療は診察室血圧と中心拡張期血圧を有意に低下させ、24時間ABPM管理率を改善する。