注目論文:特発性肺線維症における抗線維化薬治療の長期効果と効果予測因子

呼吸器内科
特発性肺線維症(IPF)の長期治療に関する貴重なデータです。抗線維化薬を3年間完遂できた患者においても、約27%で疾患進行が認められることが明らかになりました。特に診断時の肺機能が比較的保たれている非喫煙者で、治療開始1年目の肺機能低下が大きい患者や下痢の副作用を訴える患者は、治療にもかかわらず進行するリスクが高いことが示されました。当院でも抗線維化薬治療を行うIPF患者が増えており、長期治療効果の予測因子を同定することは、個別化医療の観点から重要な知見と考えられます。
Prevalence and Predictors of Response to Antifibrotics in Long-Term Survivors with Idiopathic Pulmonary Fibrosis
特発性肺線維症の長期生存者における抗線維化薬の反応性の有病率と予測因子
Cocconcelli E, Bernardinello N, Cameli P, Di Liberti R, Alhamad EH, Gregori D, Pianigiani T, Dartora C, Messina R, Di Leo I, Castelli G, La Blasca T, Scichilone N, Bargagli E, Spagnolo P, Balestro E.
Lung. 2025 Feb 25;203(1):35.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39998625/
背景:
抗線維化薬治療にもかかわらず、IPFの自然経過は予測不能であり続けています。さらに、一部の患者は有害事象の発生により治療を中止しています。これまで、長期治療の効果や治療反応の予測因子に関するデータは存在していませんでした。本研究では、少なくとも3年間抗線維化薬で治療されたIPF患者の機能的経過を評価し、治療反応の予測因子を確立することを目的としました。

研究デザイン:
この多施設研究では、少なくとも3年間の研究期間中に1ヶ月以上治療を中断していないIPFの長期生存患者を対象としました。3年間の治療中に観察された予測FVC%の絶対的低下(年単位で標準化)に基づき、患者を進行群(≥5%)と非進行群(<5%)に分類しました。

結果:
中断なく3年間の抗線維化薬治療を完了した172名のIPF患者を特定しました。これらIPF患者の27%は、治療への完全な遵守にもかかわらず進行しました。進行群は非進行群と比較して非喫煙者である可能性が高く、下痢の発生率が高く、診断時の肺機能がより保たれていました。診断時のFVC %予測値およびリットル、治療1年目のFVC低下が大きいこと、非喫煙者であること、および治療中の下痢の訴えは、疾患進行の独立した予測因子でした。

結論:
抗線維化薬に3年間遵守したIPF患者のほぼ3分の1が進行を経験しています。診断時に肺機能が保たれているにもかかわらず治療開始1年目に機能低下が見られること、非喫煙者であること、および治療中の下痢の発生が、疾患進行の独立した予測因子です。