注目論文:GLP-1受容体作動薬使用者における術後誤嚥性肺炎リスク
呼吸器内科
近年、体重管理のためにGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)の処方が増加していますが、術前のGLP-1 RA使用が術後合併症リスクに与える影響についてはほとんど分かっていませんでした。本研究では、MarketScanデータベースを用いた大規模コホート研究により、術前のGLP-1 RA使用と術後誤嚥性肺炎との関連を検討しました。結果として、GLP-1 RA使用者と非使用者の間で術後肺炎発症リスクに有意差は認められませんでした。これは、術前のGLP-1 RA休薬ガイドラインの再評価が必要かもしれないことを示唆する重要な知見です。
Postoperative Aspiration Pneumonia Among Adults Using GLP-1 Receptor Agonists
GLP-1受容体作動薬を使用している成人における術後誤嚥性肺炎
Chen YH, Zink T, Chen YW, Nin DZ, Talmo CT, Hollenbeck BL, Grant AR, Niu R, Chang DC, Smith EL.
JAMA Netw Open. 2025 Mar 3;8(3):e250081.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40036031/
GLP-1受容体作動薬を使用している成人における術後誤嚥性肺炎
Chen YH, Zink T, Chen YW, Nin DZ, Talmo CT, Hollenbeck BL, Grant AR, Niu R, Chang DC, Smith EL.
JAMA Netw Open. 2025 Mar 3;8(3):e250081.
背景:
グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)は近年、体重管理のための処方が増加しています。しかし、術前のGLP-1 RA使用が術後合併症リスクの増加と関連するかについてはほとんど知られていません。
研究デザイン:
本研究はMarketScan商業保険請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究で、2020年4月1日から2022年9月30日までの間に14種類の一般的な外科手術を受けた患者を対象としました。18歳未満、複数の外科手術を受けた患者、手術前90日以内に肺炎や急性呼吸不全の既往がある患者は除外されました。データ分析は2023年12月から2024年3月に実施されました。主要評価項目は術後30日以内の誤嚥性肺炎発症とし、患者特性や手術特性を調整した多変量ロジスティック回帰分析が行われました。
結果:
対象となった366,476名(年齢中央値53歳[IQR, 43-62歳])のうち、56.4%が女性でした。このコホートで5,931名(1.6%)が術前にGLP-1 RAの処方を受けていました。GLP-1 RA使用者は非使用者と比較して、女性の割合が高く(59.0% vs 56.4%)、肥満と糖尿病の両方の診断を受けている割合も高かったです(47.5% vs 6.8%)。調整後の分析では、GLP-1 RA使用者と非使用者の間で術後肺炎のオッズに有意差は認められませんでした(オッズ比 0.78; 95% CI, 0.57-1.06; P = .12)。
本コホート研究では、手術後の副作用に関する懸念が高まっているにもかかわらず、術前のGLP-1 RA使用と短期的な術後誤嚥性肺炎との間に有意な関連は認められませんでした。この結果は、GLP-1 RAの術前休薬ガイドラインの再評価が有益である可能性を示唆しています。
グルカゴン様ペプチド-1受容体作動薬(GLP-1 RA)は近年、体重管理のための処方が増加しています。しかし、術前のGLP-1 RA使用が術後合併症リスクの増加と関連するかについてはほとんど知られていません。
研究デザイン:
本研究はMarketScan商業保険請求データベースを用いた後ろ向きコホート研究で、2020年4月1日から2022年9月30日までの間に14種類の一般的な外科手術を受けた患者を対象としました。18歳未満、複数の外科手術を受けた患者、手術前90日以内に肺炎や急性呼吸不全の既往がある患者は除外されました。データ分析は2023年12月から2024年3月に実施されました。主要評価項目は術後30日以内の誤嚥性肺炎発症とし、患者特性や手術特性を調整した多変量ロジスティック回帰分析が行われました。
結果:
対象となった366,476名(年齢中央値53歳[IQR, 43-62歳])のうち、56.4%が女性でした。このコホートで5,931名(1.6%)が術前にGLP-1 RAの処方を受けていました。GLP-1 RA使用者は非使用者と比較して、女性の割合が高く(59.0% vs 56.4%)、肥満と糖尿病の両方の診断を受けている割合も高かったです(47.5% vs 6.8%)。調整後の分析では、GLP-1 RA使用者と非使用者の間で術後肺炎のオッズに有意差は認められませんでした(オッズ比 0.78; 95% CI, 0.57-1.06; P = .12)。
本コホート研究では、手術後の副作用に関する懸念が高まっているにもかかわらず、術前のGLP-1 RA使用と短期的な術後誤嚥性肺炎との間に有意な関連は認められませんでした。この結果は、GLP-1 RAの術前休薬ガイドラインの再評価が有益である可能性を示唆しています。