熱帯・亜熱帯地域では一年を通じてインフルエンザが流行し、また温帯地域でもワクチン効果が約6ヶ月で低下することが知られています。本論文では年2回のインフルエンザワクチン接種が疾病負担を軽減する可能性について議論されています。特にA(H3N2)株に対するワクチン効果の減弱が顕著であるため、年2回接種によって免疫レベルを維持できる可能性があります。また、WHOが年2回ワクチン株を更新していることから、最新の株に対応したワクチンの接種も可能になります。実施に向けては、エビデンスの不足、頻回接種による免疫原性への影響、コストや実現可能性などの課題も存在します。日本でも気候変動や社会のグローバル化によりインフルエンザの流行パターンが変化する可能性があり、新たな予防戦略として検討に値すると考えられます。

背景：
インフルエンザワクチンは、ウイルスの進化と予防効果の減弱を考慮して年1回の接種が推奨されています。温帯地域では冬季にインフルエンザシーズンが明確に現れ、流行期間は通常6ヶ月以内です。しかし、熱帯・亜熱帯地域では年間を通じてインフルエンザが流行し、年に複数回の流行を経験することもあり、年1回の接種では個人レベルでの十分な保護が得られない可能性があります。

研究目的：
本研究では、標準的な不活化インフルエンザワクチンまたは強化インフルエンザワクチンを使用した年2回接種プログラムの可能性について検討し、保護効果を改善するための戦略として年2回接種を考慮すべき3つの理由について議論しています。

考察：
第一の理由は上述のように、一部の地域では長期間または年間を通じてインフルエンザが流行することです。第二の理由は、ワクチンの有効性が接種後約6ヶ月で大幅に低下することが観察されている点、特にA(H3N2)株に対してこの傾向が顕著であるため、年2回の接種で年後半の免疫レベルを高く維持できる可能性があります。第三の理由は、WHOが年2回ワクチン株を更新していることから、最新の株に対応したワクチンを接種できる点です。一方で、3つの潜在的な障壁または課題も議論されています。第一の課題は、年2回接種に関する既存の研究がほとんどないという知識の欠如です。第二の障壁は、より頻繁な接種により長期的な免疫原性や臨床的保護が低下する懸念です。第三はコストや実現可能性に関する懸念です。

結論：
年1回接種と比較した年2回接種の追加的な利益とコストの比較評価を推奨します。特に熱帯・亜熱帯地域など年間を通じてインフルエンザが活動する地域におけるインフルエンザの疾病負担を軽減するための他のワクチン戦略についても検討が必要です。