注目論文:フランスにおける成人マイコプラズマ肺炎アウトブレイク(2023-24年)の臨床像

呼吸器内科
フランスで2023年9月から始まったマイコプラズマ肺炎のアウトブレイクについて、全国76病院から1309名の入院患者データを解析した興味深い報告です。成人においても32%もの患者がICU入室を要し、11.9%に肺外合併症(多形紅斑、髄膜脳炎、自己免疫性溶血性貧血、心筋炎など)を認めました。また、入院前にマイコプラズマに有効な抗菌薬を投与されなかった患者はより重篤な転帰と関連していました。画像所見も非典型的なケースが多く、流行期にはマクロライド系抗菌薬の早期投与を検討すべきという結論は臨床的に重要です。
Mycoplasma pneumoniae infection in adult inpatients during the 2023-24 outbreak in France (MYCADO): a national, retrospective, observational study
フランスにおける2023-24年アウトブレイク期の成人入院患者におけるマイコプラズマ肺炎感染症(MYCADO):全国的、後ろ向き、観察研究
Gavaud A, Holub M, Asquier-Khati A, Faure K, Leautez-Nainville S, Le Moal G, Goehringer F, Luque Paz D, Arnould B, Gerber V, Martin-Blondel G, Declerck C, Gazaignes S, Blanchi S, Loubet P, Mrozek N, Perpoint T, Cresta M, Mailhe M, Bleibtreu A, Cazanave C, Bébéar C, Pourcher V, Tubach F, Palich R; MYCADO Study Group.
Lancet Infect Dis. 2025 Feb 19:S1473-3099(24)00805-3.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39986287/
背景:
フランスでは2023年9月以降、マイコプラズマ・ニューモニエ感染症の流行が観察されています。我々は、マイコプラズマ肺炎で入院した成人の特徴を記述し、重症化関連因子を特定することを目的としました。

研究デザイン:
MYCADOは、2023年9月1日から2024年2月29日までの間に、フランス全土76病院においてマイコプラズマ・ニューモニエ感染症のために24時間以上入院した成人を対象とした後ろ向き観察研究です。臨床、検査、画像データを診療記録から収集しました。重症転帰(集中治療室入室または院内死亡の複合アウトカム)に関連する因子を多変量ロジスティック回帰分析で特定しました。

結果:
マイコプラズマ肺炎の1309名の患者が対象となり、718名(54.9%)が男性、591名(45.1%)が女性でした。年齢中央値は43歳(IQR 31-63)で、288名(22.0%)が慢性呼吸不全、423名(32.3%)が心血管疾患、105名(8.0%)が免疫抑制状態でした。最も一般的な症状は咳(1098名[83.9%])、発熱(1023名[78.2%])、呼吸困難(948名[72.4%])、倦怠感(550名[42.0%])、喀痰(473名[36.1%])、頭痛(211名[16.1%])、関節筋肉痛(253名[19.3%])、耳鼻咽喉症状(202名[15.4%])、下痢(138名[10.5%])、嘔吐(132名[10.1%])でした。1309名中156名(11.9%)に肺外症状があり、多形紅斑36名(2.8%)、髄膜脳炎19名(1.5%)、自己免疫性溶血性貧血44名(3.4%)、心筋炎17名(1.3%)が含まれていました。入院期間中央値は8日(IQR 6-11)でした。424名(32.4%)が重症転帰となり、415名(31.7%)がICUに入室、28名(2.1%)が院内死亡しました。重症転帰に関連する因子は、高血圧、肥満、慢性肝不全、肺外症状、CTでの肺胞性浸潤または両側性病変、炎症マーカーの上昇、リンパ球減少または好中球増多、入院前にマイコプラズマに有効な抗菌薬が投与されなかった患者でした。この全国観察研究は、予想外の非典型的な画像所見、高いICU入室率、重症度と有効な抗菌薬投与遅延との関連性を明らかにしました。これは臨床医に、どのような画像所見もマイコプラズマ感染症を除外できないことを認識させ、βラクタム系抗菌薬投与後の早期再評価、または流行期におけるマクロライド系抗菌薬の第一選択薬としての検討を促すべきです。