注目論文:間質性肺疾患におけるダイナペニアとサルコペニアの死亡リスク因子としての影響

呼吸器内科
間質性肺疾患(ILD)患者において、筋力低下(ダイナペニア)と筋肉量減少(サルコペニア)が独立した死亡リスク因子であることが示されました。特に慢性過敏性肺炎では、ダイナペニアが61%、サルコペニアが50%と高率に認められ、これらの評価と介入の重要性が示唆されます。当院でも間質性肺疾患患者のリハビリテーションに力を入れていますが、本研究結果はその意義を裏付けるものと考えられます。
Dynapenia and Sarcopenia as Risk Factors for Mortality in Interstitial Lung Disease
間質性肺疾患における死亡リスク因子としてのダイナペニアとサルコペニア
Ibarra-Fernández AA, Robles-Hernández R, Orea-Tejeda A, et al.
Respirology. 2025 Feb 4
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39905591/
背景:
線維性間質性肺疾患(ILD)は高い罹患率と死亡率に関連しています。患者は栄養状態の低下や体組成の変化(ダイナペニアやサルコペニア)を示すことが多く、これらは肺機能低下、運動耐容能低下、生活の質の低下と相関します。しかし、ILD患者におけるダイナペニアとサルコペニアの予後への影響は十分に検討されていませんでした。

研究デザイン:
前向きコホート研究を実施しました。ILDを特発性肺線維症(IPF)、膠原病関連ILD(CTD-ILD)、慢性過敏性肺炎(CHP)に分類し、18歳以上のILD確定診断患者を対象としました。がん、HIV感染症、神経疾患の診断がある患者は除外しました。ダイナペニアとサルコペニアはEWGSOP2基準に従って判定しました。

結果:
98名のILD患者が対象となり、33.66%がIPF、47.96%がCTD-ILD、18.37%がCHPでした。平均年齢は63.89±12.02歳で、37.76%が男性でした。交絡因子で調整後、死亡に関連するリスク因子として、ダイナペニア(HR: 2.04, 95%CI: 1.10-3.77, p=0.022)、サルコペニア(HR: 1.88, 95%CI: 1.00-3.33, p=0.049)、運動耐容能(HR: 0.99, 95%CI: 0.99-0.99, p=0.023)が同定されました。ダイナペニアの有病率はILD全体で45%であり、IPFで51%、CTD-ILDで35%、CHPで61%でした。サルコペニアの有病率は全体で29%で、IPF(39%)とCHP(50%)はCTD-ILD(14%)より高い有病率を示しました。サルコペニアとダイナペニアはILDにおける独立した死亡リスク因子であることが示されました。