注目論文:市中肺炎に対するステロイド併用療法の効果予測:データ駆動型解析

呼吸器内科
市中肺炎(CAP)に対するステロイド併用療法の30日死亡率への効果を個別患者データのメタ解析で評価した重要な研究が報告されました。CRP>204mg/Lの高炎症群でステロイド併用療法による死亡率の有意な低下が認められました(13.0% vs 6.1%)。一方で、高血糖(12.8% vs 24.8%)や再入院(3.7% vs 7.0%)のリスク増加も報告されており、適切な患者選択の重要性が示唆されました。
Predicting benefit from adjuvant therapy with corticosteroids in community-acquired pneumonia: a data-driven analysis of randomised trials
市中肺炎におけるステロイド併用療法の効果予測:ランダム化試験のデータ駆動型解析
Smit JM, et al.
Lancet Respir Med. 2024
https://www.thelancet.com/journals/lanres/article/PIIS2213-2600(24)00405-3/abstract
背景:
市中肺炎患者におけるステロイド併用療法に関する複数のランダム化比較試験(RCT)が実施されていますが、死亡率への効果については議論が続いています。本研究では、市中肺炎患者の30日死亡率に対するステロイド併用療法の治療効果の異質性(HTE)を評価することを目的としました。

研究デザイン:
2024年7月1日以前に発表された、市中肺炎で入院した患者を対象としたステロイド併用療法とプラセボを比較したRCTの個別患者データメタ解析を実施しました。主要評価項目は30日全死因死亡率とし、intention-to-treat原則に従って解析を行いました。HTEはリスクモデリングと効果モデリングを用いて分析し、6つの試験でステロイド効果モデルを構築し、事前登録後に受領した2つの試験データで外部検証を行いました。

結果:
8つのRCT、3224名が対象となり、全体で246名(7.6%)が30日以内に死亡しました(ステロイド群106/1618名[6.6%] vs プラセボ群140/1606名[8.7%]、オッズ比0.72[95%信頼区間:0.56-0.94]、p=0.017)。CRPを選択したステロイド効果モデルは、最新の2つの試験による外部検証で有意なHTEを示しました。CRP>204mg/Lの予測効果ありと判定された群(n=630)では、プラセボ群39/301名(13.0%)に対しステロイド群20/329名(6.1%)と有意な死亡率低下を認めました(オッズ比0.43[0.25-0.76]、pinteraction=0.026)。一方で、ステロイド療法により高血糖(24.8% vs 12.8%)と再入院(7.0% vs 3.7%)のリスクが有意に増加しました。市中肺炎入院患者に対するステロイド併用療法は全体として30日死亡率を有意に低下させ、特にベースラインのCRP値が高い患者で顕著な死亡率低下が観察されました。