注目論文:抗MDA5陽性皮膚筋炎関連間質性肺疾患に対するトファシチニブとカルシニューリン阻害薬の有効性比較

呼吸器内科
抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎関連間質性肺疾患(MDA5+DM-ILD)は予後不良な疾患ですが、その初期治療としてトファシチニブ(TOF)とカルシニューリン阻害薬(CNI)を比較した大規模な多施設研究が報告されました。この研究では、TOFがCNIと比較して1年生存率を約9%改善させることが示されました。60歳未満、RPILDがない、または初期のPaO2/FiO2が300mmHg以上の患者でより効果が高い可能性が示唆されており、治療選択の重要な指標となります。
Effectiveness and safety of tofacitinib versus calcineurin inhibitor in interstitial lung disease secondary to anti-MDA5-positive dermatomyositis: a multi-centre cohort study
抗MDA5陽性皮膚筋炎関連間質性肺疾患におけるトファシチニブとカルシニューリン阻害薬の有効性と安全性の比較:多施設コホート研究
Wu W, Guo B, Sun W, et al.
Eur Respir J. 2025 Jan 30:2401488
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39884766/
背景:
抗メラノーマ分化関連遺伝子5陽性皮膚筋炎に伴う間質性肺疾患(MDA5+DM-ILD)に対する初期免疫抑制療法として、トファシチニブ(TOF)とカルシニューリン阻害薬(CNI)の有効性と安全性を比較することを目的としました。

研究デザイン:
2014年4月から2023年1月までの間に、中国の5つの三次医療機関で新規に診断されたMDA5+DM-ILD(ILDの経過が3ヶ月未満)の成人患者を対象とした後ろ向きコホート研究を実施しました。主要有効性評価項目は1年以内の肺移植を除く生存率とし、実臨床研究における調整には傾向スコアに基づく逆確率重み付け(IPTW)を適用しました。

結果:
対象コホートにおいて、TOF群(290名)の94名(32.4%)とCNI群(225名)の105名(46.7%)が1年以内に死亡または肺移植を受けました。IPTWによる調整後、1年以内の肺移植を除く生存率はTOF群で有意に高く(log-rank p=0.013)、IPTWデータセットでの多変量Cox解析では、1年生存率に対するTOF対CNIのハザード比は0.72(95%信頼区間:0.56-0.94、p=0.013)でした。調整後の生存率の差は9.3%(95%信頼区間:2.8%-15.8%)でした。感度分析でも一貫した結果が得られ、60歳未満、RPILDがない、または初期のPaO2/FiO2が300mmHg以上の患者でTOFの効果がより高い可能性が示されました。日和見感染が主な治療関連重篤有害事象であり、その発生率は両群で同程度でした(42.4%対45.3%)。この大規模多施設コホート研究により、MDA5+DM-ILDにおいて、トファシチニブはカルシニューリン阻害薬と比較して1年肺移植除外生存率の有意な改善を示しました。