注目論文:重症肺炎患者におけるニューモシスチス菌定着の臨床的意義

呼吸器内科
重症肺炎患者におけるニューモシスチス菌の定着が予後不良因子となることが示されました。当院でも重症肺炎患者の気管支肺胞洗浄液でニューモシスチス菌が検出されることがありますが、その臨床的意義について時に悩むことがありました。本研究により、ニューモシスチス菌定着は他のウイルス感染症との関連も強く、予後不良因子となることが示されました。
Clinical Characteristics and Prognosis of Patients With Severe Pneumonia With Pneumocystis jirovecii Colonization: A Multicenter, Retrospective Study
重症肺炎患者におけるニューモシスチス菌定着の臨床的特徴と予後:多施設後ろ向き研究
Jiang Y, Huang X, Zhou H, Wang M, Wang S, Ren X, He G, Xu J, Wang Q, Dai M, Xiong Y, Zhong L, He X, Deng X, Pan Y, Xu Y, Cai H, Jin S, Wang H, Huang L.
Chest. 2025 Jan;167(1):54-66
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39053646/
背景:
長年にわたり、重症肺炎患者におけるニューモシスチス菌定着の発生率と臨床的特徴は不明確でした。

研究デザイン:
2019年から2023年までの期間に17の医療センターのICUで気管支肺胞洗浄液の臨床メタゲノム解析を受けた重症肺炎患者を対象とした多施設後ろ向きマッチング研究を実施しました。診断は臨床メタゲノム解析、肺CT所見、臨床症状に基づいて行われました。傾向スコアマッチングとCox多変量回帰分析により、ニューモシスチス菌定着患者と非定着患者の予後を比較しました。

結果:
ニューモシスチス菌陽性患者の40%が定着と判断されました。定着群では非定着群と比較して、免疫抑制患者の割合が高く、リンパ球数が低値でした。また、サイトメガロウイルス、EBウイルス、HHV-6B、HHV-7、TTV(トルクテノウイルス)などのウイルスの肺内検出頻度が高かったことが示されました。傾向スコアマッチングで構築した2つのコホートにおいて、共検出微生物と臨床的特徴を組み込んだCox比例ハザードモデルにより、ニューモシスチス菌定着が重症肺炎患者の死亡の独立した危険因子であることが明らかになりました。共検出微生物の有無やST合剤非投与患者を含めた感度分析でも同様の結論が得られました。免疫抑制および低リンパ球数は、非ニューモシスチス肺炎患者におけるP.jiroveciiの定着の危険因子として同定されました。P.jiroveciiの定着が確認された患者では、さまざまなウイルスがより頻繁に検出されました。また、重症肺炎患者においては、P.jiroveciiの定着は28日死亡率の上昇と関連していることが明らかになりました。