注目論文:気管支拡張症患者におけるマクロライド維持療法の心血管系への有効性と安全性

呼吸器内科
気管支拡張症患者においてマクロライド維持療法(MMT)が増悪を抑制することは知られていましたが、心血管系への影響については十分な検討がありませんでした。本研究では香港の大規模コホートを用いて、MMTが主要心血管イベント(MACE)を32%低下させることを示しました。さらに不整脈リスクの上昇も認めず、心血管系の安全性も確認されています。
Cardiovascular Benefits and Safety Profile of Macrolide Maintenance Therapy in Patients with Bronchiectasis
気管支拡張症患者におけるマクロライド維持療法の心血管系への有効性と安全性プロファイル
Guo R, Wat D, Lam SHM, Bucci T, Tsang CT, Cai AP, Chan YH, Ren QW, Huang JY, Zhang JN, Gu WL, Zhu CY, Hung YM, Frost F, Lip GYH, Yiu KH.
Eur Respir J. 2024 Dec 12:2401574.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39603670/
背景:
マクロライド維持療法(MMT)は気管支拡張症患者の増悪を減少させる効果が示されており、増悪は主要な心血管イベントのリスク因子となっています。しかし、この患者群におけるMMTの心血管系への有効性と安全性に関する包括的な評価は不足しています。

研究デザイン:
この地域全体を対象としたコホート研究では、2001年から2018年の間に香港で気管支拡張症と診断された患者を分析しました。患者はMMT投与群と非投与群に分類され、交絡因子の調整にはプロペンシティスコアマッチングが使用されました。主要評価項目は心血管死、心筋梗塞、脳卒中を含む主要心血管イベント(MACE)とし、安全性評価項目は心室性不整脈または突然心臓死の発生としました。

結果:
気管支拡張症患者22,895名が特定され、1:2のプロペンシティスコアマッチング後、最終的なコホートはMMT投与群1,123名と非投与群2,014名の計3,137名となりました。MMT投与はMACEの有意なリスク低下と関連し(1000人年あたり16.38対24.11イベント、HR 0.68、95%信頼区間0.52-0.90)、重要な点として、心室性不整脈または突然心臓死のリスク上昇は認められませんでした(1000人年あたり7.17対7.67イベント、HR 0.93、95%信頼区間0.60-1.44)。気管支拡張症患者に対するMMT投与は、重篤な不整脈関連有害事象のリスク上昇を示すことなく、MACEリスクの有意な低下と関連していました。