注目論文:COPD増悪後の心血管イベントリスクの時間的推移

呼吸器内科
COPDの増悪後、特に重症増悪では2週間以内に心血管イベントリスクが著明に上昇することが示されました。中等症増悪では14-30日後にリスクが最大となり、増悪の重症度に関わらず1年以上リスクが持続することが明らかになりました。
Temporal Risk of Nonfatal Cardiovascular Events After Chronic Obstructive Pulmonary Disease Exacerbation: A Population-based Study
慢性閉塞性肺疾患増悪後の非致死的心血管イベントの時間的リスク:集団ベース研究
Graul EL, Nordon C, Rhodes K, Marshall J, Menon S, Kallis C, Ioannides AE, Whittaker HR, Peters NS, Quint JK.
Am J Respir Crit Care Med. 2024 Apr 15;209(8):960-972.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38127850/
背景:
COPD増悪後の心血管イベントは認識されていますが、これまでの研究は試験の事後解析であり、増悪の重症度による区別がなく、心血管アウトカムに死亡を含めていたか、個別のアウトカムを時間的に検討するための検出力が不十分でした。

研究デザイン:
2014年から2020年までの英国Clinical Practice Research Datalink Aurumの一次医療データベースからCOPD患者を対象としました。初回COPD増悪日、または増悪のない患者では適格基準を満たした日を開始日としました。複合および個別の心血管イベント(急性冠症候群、不整脈、心不全、虚血性脳卒中、肺高血圧症)を病院データから特定し、調整済みCox回帰モデルを用いて平均および時間層別化したハザード比を推定しました。

結果:
213,466名の患者のうち、146,448名(68.6%)が増悪を経験し、119,124名(55.8%)が中等症増悪、27,324名(12.8%)が重症増悪でした。40,773件の心血管イベントが記録され、増悪後1-14日以内に心血管イベントの相対リスクが上昇し(aHR 3.19、95%CI 2.71-3.76)、その後徐々に低下するものの1年後も高値(aHR 1.84、95%CI 1.78-1.91)を維持していました。重症増悪後1-14日のハザード比が最も高く(aHR 14.5、95%CI 12.2-17.3)、中等症増悪では14-30日後が最高(aHR 1.94、95%CI 1.63-2.31)でした。重症増悪後2週間で最も影響が大きかった心血管アウトカムは、不整脈(aHR 12.7、95%CI 10.3-15.7)と心不全(aHR 8.31、95%CI 6.79-10.2)でした。中等症COPD増悪後の心血管イベントは重症増悪後よりもやや遅れて発生し、重症度に関係なく1年以上相対リスクが上昇したままでした。増悪後の期間は、将来の心血管イベントを予防するための臨床介入と治療最適化の重要な機会となります。