注目論文:慢性閉塞性肺疾患に伴う肺高血圧症におけるPDE5阻害薬の生存率改善効果

呼吸器内科
COPDに伴う肺高血圧症の管理は重要な課題です。本研究は、大規模なメタレジストリからPDE5阻害薬による生存率改善効果を示しており、特に肺血管抵抗が予後予測因子として重要であることを明らかにしました。実臨床においても、今後、COPDに伴う肺高血圧症の管理方針を考える上で重要な知見と考えられます。
Association of Phosphodiesterase-5 Inhibitor Treatment With Improved Survival in Pulmonary Hypertension Associated With COPD in the Pulmonary Vascular Research Institute GoDeep Meta-Registry
COPD関連肺高血圧症におけるPDE5阻害薬治療と生存率改善の関連:Pulmonary Vascular Research Institute GoDeepメタレジストリによる検討
Tello K, Yogeswaran A, Majeed RW, et al.
Chest. 2025 Jan;167(1):224-240.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39182575/
背景:
COPDの患者は肺高血圧症(PH)を合併することが多く、肺血管抵抗(PVR)が5 Wood units(WU)を超える重症PHは移植を要さない生存率の低下と密接に関連します。このような状況でPH標的治療薬の効果は明確ではありません。

研究デザイン:
Pulmonary Vascular Research Institute GoDeepメタレジストリから、診断時に右心カテーテル検査データが利用可能なCOPDとPHを有する患者を対象としました。Cox回帰分析やPHの重症度、併存疾患、肺機能検査結果に基づくサブグループ解析など、様々な統計手法を用いてPH標的治療薬の使用状況と移植を要さない生存率との関連を調査しました。不死時間バイアスはランドマーク法で対処しました。

結果:
2023年12月時点で、GoDeepメタレジストリには26,981名の患者が登録されており、このうちCOPDとPHを有する836名を解析対象としました。年齢中央値66歳(四分位範囲59-73歳)、FEV1予測値51%(34-69%)、平均肺動脈圧35mmHg(28-44mmHg)、PVR 5WU(4-8WU)、心係数2.5L/min/m2(2.0-2.9L/min/m2)で、大部分がWHO機能分類III度でした。5年移植非実施生存率は42%でした。多変量Cox比例ハザードモデルでは、PVRは主要な予後予測因子でしたが、FEV1は予後予測因子とはなりませんでした。418名(50%)がPDE5阻害薬治療を受け、全コホートのハザード比0.65(0.57-0.75)、ランドマーク解析でのハザード比0.83(0.74-0.94)と、有意な死亡率低下と関連していました。この効果は、中等度から重症のPH、様々な併存疾患、酸素投与必要性に関するサブグループ解析でも一貫して認められました。COPDとPHを有する患者は移植を要さない生存率が不良であり、PVRが死亡率の予測因子となることが示されました。