注目論文:若年成人におけるFEV1低値の多様性に関する前向き・後ろ向き解析

呼吸器内科
若年成人のFEV1低値の原因として、PRISm(Preserved Ratio Impaired Spirometry)が最も多いことが示されました。また、これらの呼吸機能異常は小児期・思春期から既に同定可能であることが明らかとなり、早期からの介入の重要性が示唆されます。
Heterogeneity of reduced FEV1 in early adulthood: A looking forward, looking backwards analysis
若年成人におけるFEV1低値の多様性:前向きおよび後ろ向き解析
Olvera N, Agusti A, Vonk JM, Wang G, Hallberg J, Boezen HM, van den Berge M, Melén E, Faner R.
Respirology. 2025 Jan 12
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39800892/
背景:
一部の個人は若年成人期に正常なピークFEV1に到達しません。これが気流制限や肺の拘束性障害によるものかは不明でした。

研究デザイン:
この課題を検討するため、(1)オランダのLifelines一般住民コホートの25-35歳の参加者19,791名を5年間前向きに追跡し、(2)スウェーデンのBAMSE出生コホートの参加者2,032名について、24歳時点での呼吸機能検査結果を16歳および/または8歳時点と比較して後ろ向きに解析しました。

結果:
Lifelinesコホートでは、25-35歳時点で8.5%の参加者がFEV1低値を示し、その68%がPRISm、32%が気流制限(low-limited)によるものでした。また、FEV1正常者の3.8%に気流制限(normal-limited)が認められました。Low-limitedとnormal-limitedでは喫煙歴と喘息診断が多く見られましたが、PRISmではそのような関連は認められませんでした(p<0.05)。5年間の追跡で91.2%の参加者が同じグループに留まり、FEV1低下は正常群とnormal-limited群で同様でしたが、PRISm群とlow-limited群では統計学的に小さいものでした(p<0.05)。これらの所見は24歳時点のBAMSEコホートでも概ね再現され、low-limitedやPRISmの個人は8-16歳時点で既に同定可能でした。若年成人期のFEV1低値の主な原因はPRISmであり、それは呼吸器症状の有意な負担となっていることが示されました。また、これらの呼吸機能異常は小児期から思春期にかけて既に同定可能であることが明らかとなりました。