注目論文:BTK阻害薬治療患者における真菌感染症の疫学と臨床転帰:システマティックレビュー

呼吸器内科
B細胞リンパ腫治療に重要な位置を占めるBTK阻害薬ですが、特に第一世代のイブルチニブでは侵襲性真菌感染症の報告が相次いでいます。本研究は、BTK阻害薬治療中の真菌感染症について、病原体、発症時期、予後因子などを包括的に分析した初めてのシステマティックレビューです。真菌感染症発症までの期間は2-4ヶ月程度で、感染症発症時のBTK阻害薬の休薬が生存率改善に寄与する可能性が示唆されました。
Fungal infection in patients treated with Bruton's Tyrosine Kinase inhibitor, from epidemiology to clinical outcome: A systematic review
BTK阻害薬治療患者における真菌感染症の疫学から臨床転帰まで:システマティックレビュー
Gibert C, Blaize M, Fekkar A.
Clin Microbiol Infect. 2024 Dec 30:S1198-743X(24)00639-6.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39742965/
背景:
BTK阻害薬(BTKi)はB細胞リンパ腫の重要な治療薬として台頭してきました。悪性腫瘍治療における有効性は示されていますが、第一世代のイブルチニブ投与患者で多数の侵襲性真菌感染症(IFI)が報告されており、アカラブルチニブやザヌブルチニブでも侵襲性アスペルギルス症の報告があります。

研究デザイン:
PubMed、Embase、Web of Scienceデータベースを用いて、PRISMA基準に従って症例報告、症例シリーズ、臨床試験、コホート研究を分析しました。BTKi治療中のIFI全症例を対象とし、症例報告/症例シリーズからは患者背景、微生物学的データ、転帰を抽出しました。

結果:
92の後ろ向きおよび前向き臨床試験/コホート研究から25,215例、115の症例報告/症例シリーズから211例を解析対象としました。臨床試験/コホートでは736例のIFIが報告され、カンジダ症234例(31.8%)、アスペルギルス症227例(30.8%)、ニューモシスチス肺炎124例(16.8%)でした。症例報告/症例シリーズでは、慢性リンパ性白血病155例(73.5%)、その他の悪性腫瘍56例(26.5%)で、主なIFIはアスペルギルス症(107例、50.7%)、クリプトコックス症(33例、15.6%)、ニューモシスチス肺炎(26例、12.3%)、ムーコル症(23例、10.9%)でした。BTKi開始からIFI発症までの期間中央値は、アスペルギルス症2.3ヶ月、クリプトコックス症4.0ヶ月、ニューモシスチス肺炎3.0ヶ月、ムーコル症3.0ヶ月でした。感染症発症時にBTKiを休薬することで生存率の改善が認められました。リンパ球性悪性腫瘍に対する分子標的治療では感染性合併症という新たな課題が浮上しており、第二世代、第三世代BTKi投与患者におけるIFIのモニタリングが、これらの合併症の管理改善に重要です。