注目論文:ハイリスク患者におけるニルマトレルビル・リトナビルのCOVID-19症状改善効果と医療資源利用減少効果

呼吸器内科
COVID-19治療薬として広く使用されているニルマトレルビル・リトナビル(パキロビッド)の第3相試験の結果が報告されました。本剤は症状持続期間の短縮と医療資源利用の減少をもたらし、特に入院患者では集中治療管理を要する症例がなく、全例が自宅退院可能でした。24週までの追跡期間中の死亡例もなく、重症化リスクの高い患者における有用性が改めて示されました。
Alleviation of COVID-19 Symptoms and Reduction in Healthcare Utilization Among High-Risk Patients Treated With Nirmatrelvir/Ritonavir (NMV/R): A phase 3 randomized trial
ハイリスク患者におけるニルマトレルビル・リトナビル治療によるCOVID-19症状の改善と医療資源利用の減少:第3相ランダム化試験
Hammond J, Leister-Tebbe H, Gardner A, Abreu P, Bao W, Wisemandle W, Ansari W, Harrington MA, Simón-Campos A, Chew KW, Pypstra R, Rusnak JM.
Clin Infect Dis. 2024 Nov 11:ciae551.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39523543/
背景:
ニルマトレルビル・リトナビル(NMV/r)は軽症から中等症のCOVID-19に対する経口抗ウイルス薬です。

研究デザイン:
21カ国343施設における第2/3相二重盲検ランダム化試験で、重症化リスクの高い未接種の非入院COVID-19患者を対象に、NMV/r 300mg/100mgまたはプラセボを12時間ごと5日間投与し、1:1の割合で無作為に割り付けました。主要評価項目はCOVID-19関連入院および全死因死亡で、症状持続期間やCOVID-19関連医療機関受診を含む主要副次評価項目については、事前に規定された逐次検定とHochberg法で第1種の過誤を制御しました。

結果:
2021年7月から12月までに無作為化された2113名のうち、1966名(NMV/r群977名、プラセボ群989名)が事前規定の解析対象(症状発現から5日以内、モノクローナル抗体未使用)となりました。NMV/r群では28日目までの症状持続的改善(中央値13日 vs 15日、ハザード比1.27、p<0.0001)および症状消失(16日 vs 19日、ハザード比1.20、p=0.0022)までの期間が有意に短縮し、COVID-19関連医療機関受診回数および受診患者の割合も有意に減少しました。NMV/r投与を受けた入院患者では在院日数が短く、ICU管理や人工呼吸器管理を要する症例はなく、全例が自宅退院可能でした。追加のCOVID-19治療を要した患者はNMV/r群で少なく、24週までの追跡期間中、NMV/r群での死亡例はなかったのに対し、プラセボ群では15名が死亡しました。重症化リスクの高い患者において、NMV/rは28日目までのCOVID-19関連入院または全死因死亡を減少させるだけでなく、COVID-19症状持続期間の短縮と医療資源利用の減少をもたらすことが示されました。