注目論文:人工呼吸器関連肺炎予防におけるACE阻害薬・ARBの有効性

呼吸器内科
集中治療室における人工呼吸器関連肺炎(VAP)は重要な問題です。今回、ACE阻害薬やARBの使用がVAP発症予防に有効である可能性が示されました。特に腎障害や糖尿病を有する患者、昇圧薬や抗菌薬使用例で予防効果が高いことが示唆されています。
The association between the use of angiotensin-converting enzyme inhibitors /angiotensin receptor blockers and the development of ventilator-associated pneumonia in the intensive care unit: a retrospective cohort study
集中治療室における人工呼吸器関連肺炎の発症とACE阻害薬/ARBの使用との関連:後ろ向きコホート研究
Cai H, Shen H, Cao X.
BMC Pulm Med. 2024 Nov 21;24(1):578.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39574055/
背景:
本研究は、集中治療室(ICU)で人工呼吸管理を受けている患者において、ACE阻害薬(ACEI)またはアンジオテンシン受容体遮断薬(ARB)による治療と人工呼吸器関連肺炎(VAP)発症リスクとの関連を検討することを目的としました。

研究デザイン:
Medical Information Mart for Intensive Care IVデータベースから抽出したデータを用いた後ろ向きコホート研究を実施しました。VAPの診断は、データベースに記録された国際疾病分類コードにより確認しました。ACEIまたはARBの使用とVAPとの関連を評価するため、単変量および多変量ロジスティック回帰分析を実施しました。併存疾患(AKI、腎不全、糖尿病、高血圧、敗血症)、SAPS IIスコア、昇圧薬および抗菌薬の使用が及ぼす影響についてサブグループ解析を行いました。

結果:
対象となった8,888名の患者のうち、897名(10.09%)がVAPを発症しました。分析の結果、ACEIまたはARBによる治療を受けた患者ではVAP発症リスクが低下していました(オッズ比:0.79、95%信頼区間:0.62-0.99、P = 0.047)。サブグループ解析では、AKI(オッズ比:0.70)、腎不全(オッズ比:0.14)、糖尿病(オッズ比:0.64)を有する患者、および昇圧薬(オッズ比:0.67)と抗菌薬(オッズ比:0.74)を使用している患者で予防効果が認められました。ACEIとARBの間でVAP発症に有意な差は認められませんでした。本研究により、ACEIまたはARBの使用とVAP発症リスク低下との関連が示され、特定の併存疾患を有する患者や昇圧薬・抗菌薬使用例で顕著でした。