注目論文:間質性肺疾患急性増悪に対するステロイド療法の有効性の検討:システマティックレビュー

呼吸器内科
間質性肺疾患の急性増悪(AE-ILD)に対するステロイド療法の有効性について、システマティックレビューの結果が報告されました。非IPF-ILDでは高用量ステロイド療法が有効である可能性が示されましたが、IPFでは一定の見解が得られていません。
Corticosteroid therapy for treating acute exacerbation of interstitial lung diseases: a systematic review
間質性肺疾患急性増悪に対するステロイド療法の検討:システマティックレビュー
Srivali N, De Giacomi F, Moua T, Ryu JH.
Thorax. 2024 Dec 25:thorax-2024-222636.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39721758/
背景:
間質性肺疾患の急性増悪(AE-ILD)は致死的な転帰をたどることが多く、臨床管理において重大な課題となっています。ステロイド療法は一般的に使用されていますが、最適なレジメンや臨床的有効性については不確実な状況が続いています。この知見のギャップを埋めるため、AE-ILD患者におけるステロイド療法の臨床転帰への影響を評価するシステマティックレビューを実施しました。

研究デザイン:
PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic Reviews and Meta-Analyses)ガイドラインに従い、複数のデータベースを系統的に検索し、12,454の論文を特定しました。重複を除外し、タイトルとアブストラクトのスクリーニングを経て447論文が全文レビューの対象となり、最終的に9つの研究が包含基準を満たしました。これらの研究では、AE-ILDの治療における高用量ステロイドと低用量または非ステロイド療法を比較し、院内死亡率、長期死亡率、AE再発率などの主要アウトカムを評価しました。

結果:
9つの研究(総症例数18,509例)の解析により、ILDのサブタイプによって治療効果が異なることが明らかになりました。非特発性肺線維症(non-IPF)ILDでは、高用量ステロイド療法(プレドニゾロン換算で>1.0 mg/kg)が生存率の改善(調整ハザード比0.221、95%信頼区間0.102-0.480、p<0.001)と90日死亡率の低下を示しました。高用量ステロイドの早期漸減(2週間以内に>10%の減量)により院内死亡率が低下し(調整ハザード比0.37、95%信頼区間0.14-0.99)、最初の30日間の累積投与量が多い群(5,185±2,414 mg/月 vs 3,133±1,990 mg/月)で再発率が低下しました(調整ハザード比0.61、95%信頼区間0.41-0.90、p=0.02)。一方、IPF患者では高用量療法の有効性は一定せず、一部の研究では死亡リスクの増加(オッズ比1.075、95%信頼区間1.044-1.107、p<0.001)が報告されました。高用量ステロイド療法は、特に非IPF症例において有望な結果を示していますが、現時点でのエビデンスは一定しておらず、また、強力な裏付けとなる文献も十分でないため、確定的な結論を導き出すことは難しい状況です。AE-ILDの治療戦略を最適化するためには、今後、ランダム化比較試験によるさらなる研究が必要です。