注目論文:特発性肺線維症におけるピルフェニドンと肺癌発症リスク:全国規模の集団ベース研究

呼吸器内科
特発性肺線維症(IPF)患者における肺癌発症リスクの高さは知られていますが、本研究では、ピルフェニドン使用が肺癌発症リスクを有意に低下させる可能性が示されました。約1万人の大規模データと単施設コホートでの検証により、信頼性の高い結果が得られており、IPF診療における重要な知見と考えられます。
Pirfenidone and risk of lung cancer development in IPF: a nationwide population-based study
IPFにおけるピルフェニドンと肺癌発症リスク:全国規模の集団ベース研究
Yoon HY, Kim H, Bae Y, Song JW
Eur Respir J. 2024 Nov 7:2401484
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39510556/
背景:
特発性肺線維症(IPF)は肺癌発症リスクが高いことが知られていますが、ピルフェニドンの肺癌発症への影響は不明確でした。本研究では、IPF患者におけるピルフェニドン使用と肺癌発症の関連を調査しました。

研究デザイン:
全国レセプトデータベースから10,084名のIPF患者を対象とし、傾向スコア解析と逆確率重み付け(IPTW)およびランドマーク解析を用いて、ピルフェニドン使用による肺癌発症を評価しました。臨床的および社会経済的変数で調整したCox回帰モデルを使用し、単施設IPF臨床コホート(941名)で結果を検証しました。

結果:
患者の平均年齢は69.4歳、73.8%が男性で、31.6%がピルフェニドンを使用していました。中央値3.0年の追跡期間中、766名(7.6%;1000人年あたり21.9例)に肺癌が発症しました。IPTW後、ピルフェニドン群は非使用群と比較して発症率が低く(1000人年あたり10.4例 vs 27.9例)、IPF診断後6ヶ月のランドマーク解析でも同様の結果でした。ピルフェニドン使用は独立して肺癌リスク低下と関連し(重み付け調整ハザード比:0.347、95%信頼区間:0.258-0.466)、臨床コホートでも同様の関連が示されました(重み付け調整ハザード比:0.716、95%信頼区間:0.517-0.991)。この関連は年齢や性別で定義されたサブグループ全体で一貫していました。これらの結果から、IPF患者においてピルフェニドン使用は肺癌リスクの低下と関連する可能性が示唆されました。