注目論文:医療関連COVID-19(オミクロン株)と医療関連インフルエンザの院内アウトカム比較

呼吸器内科
COVID-19が既存の感染症対策プログラムに組み込まれつつある現在、両疾患の臨床的影響を比較検討することは重要です。本研究は、実臨床におけるオミクロン株によるCOVID-19とインフルエンザの院内死亡率が同程度であることを示しました。院内感染対策において、両疾患を同等に重要視する必要性を示唆する貴重なデータと考えられます。
Comparative effectiveness of healthcare-associated COVID-19 (Omicron) versus healthcare-associated influenza: a retrospective, nationwide cohort study in Switzerland
医療関連COVID-19(オミクロン株)と医療関連インフルエンザの院内アウトカム比較:スイスにおける後ろ向き全国コホート研究
Grant R, de Kraker MEA, Buetti N, Jackson H, Abbas M, Sobel JA, et al.
Clin Infect Dis. 2024 Nov 13:ciae558.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39535247/
背景:
COVID-19が既存の感染症対策プログラムに統合されつつある中、COVID-19と他の呼吸器疾患の臨床的影響を比較することが重要となっています。

研究デザイン:
スイスの全国規模の病院ベースサーベイランスシステムに報告された、医療関連COVID-19またはインフルエンザの症例を対象とした後ろ向きコホート研究です。対象は三次医療機関および大規模地域病院に3日以上入院した18歳以上の成人で、2022年2月1日から2023年4月30日の間にCOVID-19症状を呈しRT-PCRでSARS-CoV-2感染が確認された症例、または2018年11月1日から2023年4月30日の間にインフルエンザ症状を呈しRT-PCRでインフルエンザA型またはB型感染が確認された症例としました。主要評価項目は30日以内の院内死亡率、副次評価項目は集中治療室(ICU)入室としました。

結果:
9つの病院から、症候性の医療関連COVID-19(オミクロン株)2,901例と医療関連インフルエンザ868例が対象となりました。致死率は医療関連COVID-19(オミクロン株)で6.2%、医療関連インフルエンザで6.1%と同程度でした。調整後の30日以内院内死亡の部分分布ハザード比は0.91(95%信頼区間: 0.67-1.24)でした。ICU入室率も同程度(COVID-19: 2.4%、インフルエンザ: 2.6%)でした。医療関連COVID-19(オミクロン株)と医療関連インフルエンザの院内死亡リスクは同程度であることが示唆されました。