注目論文:インフルエンザ関連入院後の全死因死亡負荷:9年間の実態調査

呼吸器内科
インフルエンザ関連入院後の死亡について、重要な知見が報告されました。入院患者の約半数が退院後30日以内に死亡していることは臨床的に重要です。また、死因としてインフルエンザの記載が37%にとどまることは、インフルエンザによる死亡の過小評価につながる可能性があり、サーベイランスシステムの改善が必要と考えられます。ただ、在院日数が日本に比べると非常に短い米国のデータであるため、同じことが日本に当てはまるかは不明です。
The burden of all-cause mortality following influenza-associated hospitalizations, FluSurv-NET, 2010-2019
インフルエンザ関連入院後の全死因死亡負荷:FluSurv-NET、2010-2019年
O'Halloran AC, Millman AJ, Holstein R, et al.
Clin Infect Dis. 2024 Nov 4:ciae547.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39495002/
背景:
米国ではインフルエンザ関連死亡者数の推定値は毎年報告されていますが、院内死亡と退院後死亡の実態を含むインフルエンザ関連死亡の詳細な疫学データは限られています。

研究デザイン:
2010-11年から2018-19年シーズンのインフルエンザ入院サーベイランスネットワーク(FluSurv-NET)のデータを用い、死亡診断書とリンクさせて、インフルエンザ入院中または退院後30日以内の全死因死亡を特定しました。院内死亡と退院後死亡の患者の人口統計学的・臨床的特徴を記述し、死亡場所と死因を特徴づけました。

結果:
9シーズンで検査確定インフルエンザで入院した121,390例のうち、5.5%が死亡しました。死亡者の76%が65歳以上、71%が非ヒスパニック系白人で、34%が4つ以上の基礎疾患を有していました。インフルエンザ関連入院後の死亡者のうち、48%が退院後に死亡し、退院から死亡までの期間の中央値は9日(四分位範囲3-19日)でした。退院後死亡は高齢者や基礎疾患を有する患者でより多く発生しました。死亡診断書で「インフルエンザ」が死因として記載されていたのは死亡者の37%のみでした。院内死亡者では退院後死亡者と比べて、死因としてインフルエンザがより頻繁に記載され、一方で退院後死亡者では心血管疾患がより多く記載されていました。インフルエンザで入院した患者における全死因死亡の負担は大きく、死亡の約50%が退院後30日以内に発生しています。サーベイランスシステムは、全死因死亡に対するインフルエンザの影響をより正確に把握するため、退院後の転帰の捕捉を検討すべきです。