注目論文:侵襲性肺アスペルギルス症の診断アルゴリズムの性能評価

呼吸器内科
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)は、従来の免疫不全患者だけでなく、典型的なリスク因子を持たないICU重症患者でも重要な合併症となっています。診断基準としてEORTC-MSGとFUNDICUが有用であることが示されました。
Performance of diagnostic algorithms in patients with invasive pulmonary aspergillosis
侵襲性肺アスペルギルス症患者における診断アルゴリズムの性能評価
Hatzl S, Geiger C, Kriegl L, Scholz L, Reisinger AC, Kreuzer P, Fruhwald S, Wölfler A, Reinisch A, von Lewinski D, Schilcher G, Hoenigl M, Eller P, Krause R.
Clin Infect Dis. 2024 Dec 20:ciae633.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39703147/
背景:
侵襲性肺アスペルギルス症(IPA)は、かつては免疫不全患者に限られていましたが、現在では典型的なリスク因子のない重症ICU患者においても重篤な合併症となっています。組織学的証明を得ることが困難なため、実臨床での診断は十分に検証されていないアルゴリズムに依存しています。

研究デザイン:
IPA患者202名を対象とした9施設での後ろ向きコホート研究を実施しました。患者分類は、EORTC-MSG基準、FUNDICU基準、Asp-ICU基準、およびバイオマーカーを加えたAsp-ICU-BM基準に基づく多段階プロセスで行い、臨床コホートおよび組織学的に証明された症例に対するこれらの基準の予測性能を評価しました。

結果:
202名の患者のうち78名がEORTC-MSGのホスト因子を有し、EORTC-MSG基準は臨床的および組織学的に証明された症例の同定において100%の一致率を示しました。EORTC-MSGホスト因子のないICU患者112名では、臨床コホートと比較してFUNDICUが53%、Asp-ICUが4%、Asp-ICU-BMが26%の全体一致率を示しました。組織学的に証明された症例との検証では、FUNDICUは感度44%、特異度75%、Asp-ICUは感度6%、特異度100%、Asp-ICU-BMは感度28%、特異度63%でした。FUNDICU基準にARDSと心臓手術後を追加することで、感度は97%、特異度は63%に改善しました。残りの12名はEORTC-MSGホスト因子を持たずICUにも入室していない患者で、新たな分類システムの必要性が示唆されました。EORTC-MSGとFUNDICUのIPA分類システムは、IPAの大多数の患者の診断に有用であり、特にFUNDICU基準に心臓手術後合併症とARDSを組み込むことで診断精度が向上することが示されました。