注目論文:中等症から最重症COPDに対するTezepelumabの有効性と安全性:COURSE試験

呼吸器内科
トリプル吸入療法使用中の中等症から最重症COPD患者を対象としたTezepelumabの第2a相試験の結果が報告されました。主要評価項目である年間中等度/重度増悪率において、プラセボ群との有意差は認められませんでしたが、好酸球数150 cells/μL以上のサブグループでは増悪抑制効果の可能性が示唆されました。今後は好酸球高値例を対象とした更なる検討が期待されます。
Efficacy and safety of tezepelumab versus placebo in adults with moderate to very severe chronic obstructive pulmonary disease (COURSE): a randomised, placebo-controlled, phase 2a trial
中等症から最重症の慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者におけるTezepelumabの有効性と安全性(COURSE試験):無作為化プラセボ対照第2a相試験
Singh D, Brightling CE, Rabe KF, Han MK, Christenson SA, Drummond MB, Papi A, Pavord ID, Molfino NA, Almqvist G, Kotalik A, Hellqvist Å, Gołąbek M, Sindhwani NS, Ponnarambil SS; COURSE study investigators
Lancet Respir Med. 2024 Dec 6
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39653044/
背景:
TezepelumabはCOPD患者で健常者と比較して発現が増加している胸腺間質リンパ球新生因子(TSLP)を阻害するヒトモノクローナル抗体です。本研究では、トリプル吸入療法を使用中の中等症から最重症COPD患者におけるTezepelumabの有効性と安全性を評価しました。

研究デザイン:
COURSEはアジア、ヨーロッパ、北米の10カ国90施設で実施された二重盲検無作為化プラセボ対照第2a相試験です。40-80歳で中等症から最重症の気流制限があり、トリプル吸入維持療法を受けており、登録前12ヶ月間に2回以上の中等度から重度のCOPD増悪があった患者を対象としました。患者は1:1の割合でTezepelumab 420 mgまたはプラセボを4週間ごとに52週間皮下投与する群に無作為に割り付けられました。主要評価項目は52週間にわたる中等度または重度のCOPD増悪の年間発生率としました。

結果:
合計333名(平均年齢67.2歳、女性44%)が無作為化され、Tezepelumab群(165名)またはプラセボ群(168名)に割り付けられました。52週間の中等度または重度のCOPD増悪の年間発生率はTezepelumab群で1.75回、プラセボ群で2.11回(発生率比0.83、90%信頼区間:0.64-1.06、p=0.10)であり、主要評価項目は達成されませんでした。事前に規定されたサブグループ解析では、ベースラインの血中好酸球数150 cells/μL以上300 cells/μL未満の患者で年間増悪率がTezepelumab群1.64回、プラセボ群2.47回(発生率比0.66)、300 cells/μL以上の患者では1.20回vs 2.24回(発生率比0.54)と、高好酸球群で増悪抑制効果の可能性が示唆されました。有害事象の発現率は両群で同程度でした。Tezepelumab群ではプラセボ群と比較して中等度または重度のCOPD増悪の年間発生率に有意な減少は認められませんでした。中等症から最重症のCOPD患者、特にベースラインの血中好酸球数が150 cells/μL以上の患者におけるTezepelumabの有効性を評価するにはさらなる研究が必要です。Tezepelumabは忍容性が良好で、安全性の懸念は認められませんでした。