注目論文:間質性肺疾患に伴う肺高血圧症の非侵襲的診断手法と予測モデルに関するレビュー

呼吸器内科
間質性肺疾患(ILD)に伴う肺高血圧症(PH)の診断において、スクリーニングツールの重要性を包括的にまとめた論文です。心エコーでの右室圧推定値が最も予測性の高い因子とされていますが、肺の病変により評価が困難な場合も多く、現状では単一の非侵襲的検査での正確な診断は難しいとされています。当院でもILD患者のPH評価に苦慮することが多く、臨床的に重要な知見と考えられます。
Noninvasive diagnostic modalities and prediction models for detecting pulmonary hypertension associated with interstitial lung disease: a narrative review
間質性肺疾患に伴う肺高血圧症の検出のための非侵襲的診断手法と予測モデル:ナラティブレビュー
Arvanitaki A, Diller GP, Gatzoulis MA, McCabe C, Price LC, Wort SJ.
Eur Respir Rev. 2024 Oct 9;33(174):240092.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39384306/
背景:
間質性肺疾患(ILD)患者において肺高血圧症(PH)の合併は高頻度であり、罹患率と死亡率の増加に関連しています。特に重症PHのリスクがある患者を同定し、専門施設での管理につなげるため、広く利用可能な非侵襲的スクリーニングツールが求められています。

研究デザイン:
PubMedとScopusを用いて包括的な文献検索を実施し、選択基準を満たす39の論文を特定しました。ILD患者におけるPHの非侵襲的診断手法と予測モデルに関する現在のエビデンスをまとめ、これらのアプローチを批判的に評価し、将来の展望について検討しました。

結果:
現時点で、ILD患者におけるPHを正確に検出・診断できる単一の非侵襲的検査は存在しません。ドップラー心エコー図検査での推定右室圧(RVSP)がPHの最も予測性の高い因子であり、他の間接的な心エコー図マーカーにより診断精度が向上します。しかし、広範な肺病変により最適な画像が得られないため、RVSPの推定が困難な患者も存在します。胸部CT、肺機能検査、心肺運動負荷試験から得られる変数を含む既存の複合スコアの大部分は後ろ向き研究から導き出されており、外部コホートでの検証が不足しています。段階的な心エコー図アプローチに基づくスコアと機能パラメータに基づくスコアの2つのみが、検証コホートを用いてPHの存在を十分な精度で予測できました。方法論的な制限により一般化は難しいものの、これらのスコアの使用により医師がPHをより早期に検出できる可能性があります。人工知能の可能性に関するさらなる研究により、適時のPH診断に向けたよりテーラーメイドなアプローチが導かれる可能性があります。