注目論文:肺癌脳転移患者におけるPD-L1発現と免疫チェックポイント阻害薬の治療効果
呼吸器内科
実臨床における前向き観察研究から、非小細胞肺癌の脳転移症例においては、PD-L1高発現(50%以上)であっても免疫チェックポイント阻害薬の治療効果が限定的である可能性が示されました。当科でも同様の印象を持っていますが、これまで明確なエビデンスがなかったため、貴重な報告と考えます。
Efficacy of immune checkpoint inhibitors according to programmed cell death-ligand 1 expression in patients with non-small cell lung cancer and brain metastasis: A real-world prospective observational study
非小細胞肺癌脳転移患者におけるPD-L1発現別の免疫チェックポイント阻害薬の有効性:実臨床における前向き観察研究
Masuda T, Tsubata Y, Hata K, Horie M, Kiura K, Kanaji N, Inoue T, Kodani M, Yanai M, Yamaguchi K, Matsumoto N, Yamasaki M, Ishikawa N, Masuda K, Takigawa N, Kuyama S, Kubota T, Nishii K, Hotta K, Hattori N.
Thorac Cancer. 2024 Dec;15(34):2408-2417.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39415454/
非小細胞肺癌脳転移患者におけるPD-L1発現別の免疫チェックポイント阻害薬の有効性:実臨床における前向き観察研究
Masuda T, Tsubata Y, Hata K, Horie M, Kiura K, Kanaji N, Inoue T, Kodani M, Yanai M, Yamaguchi K, Matsumoto N, Yamasaki M, Ishikawa N, Masuda K, Takigawa N, Kuyama S, Kubota T, Nishii K, Hotta K, Hattori N.
Thorac Cancer. 2024 Dec;15(34):2408-2417.
背景:
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は非小細胞肺癌(NSCLC)の脳転移(BM)症例においても抗腫瘍効果を示すことが報告されています。しかし、ICIの有効性がBMの有無で同等かどうか、またBM症例においてもBMのない症例と同様にPD-L1発現が高いほどICIの効果が高まるかは明らかになっていません。
研究デザイン:
前向きに登録された1741例の肺癌コホートを用いて、BM有無によるICI治療のアウトカムを比較しました。また、PD-L1発現レベルによる治療効果の違いについても検討を行いました。
結果:
ICIまたは化学療法とICIの併用療法で治療されたNSCLC患者240例を対象としました。全患者においてBMの有無による全生存期間(OS)に有意差は認められませんでしたが(p=0.489)、PD-L1発現50%以上の群では、BM症例のOSが有意に短い結果でした(16.5か月 vs 30.6か月、p=0.003)。一方、PD-L1発現1%以上50%未満または陰性の群では差を認めませんでした。多変量解析において、PD-L1発現50%以上の群では、BMはOSに対する独立した予後不良因子でした(ハザード比2.045、95%信頼区間1.058-3.953、p=0.033)。本研究により、PD-L1発現が50%以上の症例においては、BM症例でのICIの効果がBMのない症例と比較して限定的である可能性が示唆されました。
免疫チェックポイント阻害薬(ICI)は非小細胞肺癌(NSCLC)の脳転移(BM)症例においても抗腫瘍効果を示すことが報告されています。しかし、ICIの有効性がBMの有無で同等かどうか、またBM症例においてもBMのない症例と同様にPD-L1発現が高いほどICIの効果が高まるかは明らかになっていません。
研究デザイン:
前向きに登録された1741例の肺癌コホートを用いて、BM有無によるICI治療のアウトカムを比較しました。また、PD-L1発現レベルによる治療効果の違いについても検討を行いました。
結果:
ICIまたは化学療法とICIの併用療法で治療されたNSCLC患者240例を対象としました。全患者においてBMの有無による全生存期間(OS)に有意差は認められませんでしたが(p=0.489)、PD-L1発現50%以上の群では、BM症例のOSが有意に短い結果でした(16.5か月 vs 30.6か月、p=0.003)。一方、PD-L1発現1%以上50%未満または陰性の群では差を認めませんでした。多変量解析において、PD-L1発現50%以上の群では、BMはOSに対する独立した予後不良因子でした(ハザード比2.045、95%信頼区間1.058-3.953、p=0.033)。本研究により、PD-L1発現が50%以上の症例においては、BM症例でのICIの効果がBMのない症例と比較して限定的である可能性が示唆されました。