注目論文:進行非小細胞肺癌における制酸薬使用下での免疫チェックポイント阻害薬の有効性解析

呼吸器内科
制酸薬(PPI、P-CAB、H2ブロッカー)使用と免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の治療効果について興味深い報告がありました。一見すると制酸薬使用群で予後が悪いように見えましたが、ステロイドやNSAIDsの使用を考慮すると、制酸薬自体はICIの効果に影響を与えていませんでした。
Analysis of immune checkpoint inhibitors for advanced non-small cell lung cancer in patients receiving antacids
進行非小細胞肺癌患者における制酸薬使用下での免疫チェックポイント阻害薬の解析
Isono T, Furuno H, Onodera Y, Maruyama T, Takeuchi Y, Ayaka Kojima, Nishida T, Kobayashi Y, Ishiguro T, Takaku Y, Kurashima K, Kagiyama N.
Respir Investig. 2024 Nov;62(6):951-959.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39186878/
背景:
プロトンポンプ阻害薬(PPI)は免疫チェックポイント阻害薬(ICI)の効果を低下させると報告されていますが、PPI以外の制酸薬とICIの効果との関連や、制酸薬、ステロイド、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)のICI治療への影響を同時に検討した報告は少ない状況です。


研究デザイン:
2016年1月1日から2022年12月31日までにICI治療を受けた非小細胞肺癌患者381名を対象とした後ろ向き研究を実施しました。主要評価項目は全生存期間(OS)、副次評価項目は無増悪生存期間(PFS)としました。制酸薬としては、H2受容体拮抗薬(H2RA)、PPI、カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)を含めました。


結果:
218名が制酸薬を使用しており、その内訳はPPI 168名、P-CAB 37名、H2RA 13名でした。制酸薬使用群は非使用群と比較してPFSとOSが悪く(PFS 2.9か月 vs 6.2か月、OS 12.3か月 vs 24.0か月)、PPI、P-CAB、H2RAのいずれの使用でも同様の結果でした。しかし、ステロイドとNSAIDsの使用で層別化すると、制酸薬の有無による有意差は認められませんでした。多変量解析では、がん関連症状に対するステロイドとNSAIDsの使用は予後不良と関連していましたが、PPI、P-CAB、H2RAを含む制酸薬は関連を認めませんでした。制酸薬使用はNSAIDsやステロイドの使用を考慮すると、ICIの効果には影響を与えていませんでした。これは、NSAIDsとステロイドの使用理由の多くが予後不良因子であるがん関連症状であり、これらの薬剤を使用している患者の多くが制酸薬も使用していたためと考えられます。