注目論文:心筋梗塞患者に対する電子的ナッジ(Nudge)介入によるインフルエンザワクチン接種率向上:全国規模3つのRCTからの知見

呼吸器内科
心筋梗塞の既往がある患者において、心血管系の利点を強調した電子的なナッジ介入が、インフルエンザワクチン接種率を効果的に向上させることが示されました。
*ナッジ(nudge)とは、行動経済学の用語で、人々の行動を強制せずに、望ましい選択へと緩やかに誘導する仕組みや工夫のことです。
Electronic Nudges and Influenza Vaccination Among Patients With a History of Myocardial Infarction: Insights From 3 Nationwide Randomized Clinical Trials
心筋梗塞既往患者におけるインフルエンザワクチン接種に対する電子的ナッジ介入:3つの全国規模ランダム化臨床試験からの知見
Bhatt AS, Johansen ND, Vaduganathan M, Modin D, Pareek M, Chatur S, et al.
JAMA Cardiol. 2024 Nov 17:e244648.
https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39550717/
背景:
急性心筋梗塞(AMI)患者におけるインフルエンザワクチン接種は主要心血管イベントを減少させ、診療ガイドラインで強く推奨されています。このハイリスク患者におけるワクチン接種を改善する効果的な戦略が必要とされています。


研究デザイン:
デンマークで2022-2023年と2023-2024年のインフルエンザシーズンに実施された3つの全国規模ランダム化試験(NUDGE-FLU、NUDGE-FLU-2、NUDGE-FLU-CHRONIC)のデータを用いました。参加者は通常のケアまたは行動学的に設計された電子的な手紙によるナッジ介入にランダムに割り付けられました。事前に規定された参加者レベルのプール解析で、手紙によるナッジと通常ケアの効果におけるAMI既往の影響を検討しました。


結果:
3つの試験の合計2,146,124名のランダム化(平均年齢71.1歳、女性51.9%)のうち、59,458名(2.8%)がAMIの既往を有していました。ナッジ手紙による接種率の改善は、AMI既往の有無で同程度でした(+1.81 vs +1.32パーセントポイント; AMI状態による交互作用のP = .09)。しかし、ワクチン接種の心血管系への利点を強調した手紙は、AMI既往のある患者でより大きな改善効果を示しました(+3.91 vs +2.03パーセントポイント; P = .002)。AMI患者の中でも、前シーズンに未接種だった患者で特に効果が高く(+13.7 vs +1.48パーセントポイント; P < .001)、若年の慢性疾患患者では、より最近AMIを発症した患者で特に効果的でした(P < .001)。このような低コストで拡張可能な実装戦略は、ハイリスク患者のインフルエンザワクチン接種を促進するために考慮されるべきです。